フィガロの結婚
『フイガロの結婚』のDVDを2本持っています。二つともイギリス・グラインドボーン・フェスティヴァルの録画。1973年と1994年の演奏。73年盤は古いオペラハウスでのもの。94年盤は新しいオペラハウスのオープニング記念のもの。
CDはドイツ・グラモフォン、1968年の録音盤。これは、メンバーがすごい。
アルマヴィーヴァ伯爵:ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ
伯爵夫人・ロジーナ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ
スザンナ:エディット・マティス
フィガロ:ヘルマン・プライ
ケルビーノ:タチヤナ・トロヤノス
【指揮:カール・ベーム オーケストラ・合唱:ベルリン・ドイツオペラ】
この録音のために集まったもののようです。実際にこのメンバーでオペラが実演されたことはないらしい。あったら見たかった。
フィガロは、素敵なアリア、重唱が、これでもかというくらい続くので、見ても聞いても、ずーっといい気持でいられます。二重唱、三重唱、五重唱、はては八重唱まで、歌が重なります。せりふは重なっても筋を追うのに差しさわりがないようにできています。
女声の重唱曲にきわだって傑作が多いのもこのオペラの魅力です。第1幕第5曲、スザンナ(ソプラノ、伯爵夫人の部屋付きメイド)とマルチェリーナ(アルトあるいはメゾ・ソプラノ、家の女中頭)との二重唱「どうぞお先に、すてきな奥様」は、きれいなメロディーに乗って、じつはフィガロをめぐる女ふたりのつばぜりあいが展開されるのです。
とりわけ美しい二重唱は、ロジーナとスザンナとが謀って、伯爵を誘い出すための手紙を書くシーンの「そよ風に」です。ここだけ上手な歌が聞ければ、フィガロは十分聞いたと感じる、と言う人もいるくらいです。
DVDは、ひとつがキリ・テ・カナワとイレアナ・コトルバシュ、もうひとつがルネ・フレミングとアリソン・ハグリーの組み合わせです。衣装をつけた歌手を見て聞くのですから、こんなに楽しいことはありません。ハーモニーがすばらしい。
前にも書きましたが、このオペラは、スザンナ役が大活躍します。これがうまいとトクした気分になる。持っている3本とも甲乙つけがたいできばえです。
もちろん、ケルビーノ(メゾ・ソプラノあるいはソプラノ、小姓を女が演じるいわゆる「ズボン役」)がうまくなきゃいけない。73年盤のフレデリカ・フォン・シュターデが、「男前のうえに美人」というむずかしい設定にぴったりで、かつみごとな歌唱を聞かせます。