女帖
半村良という作家が『週刊文春』に昭和50年の1年間書いた見開きエッセイが「女帖」と言いました。
もと板前やバーテンなどを仕事にしていた人で、その間に観察したさまざまな女のひとの、言ったこと、生態などを、軽いタッチでしるしていました。体験にもとづいているとはいえ、フィクションもまじえてあったと思います。
翌年に文藝春秋から単行本で出ました。さっそく買って読みました。その後、いつの間にか本棚から消えて長いこと忘れていた。文春文庫に入ったのは覚えていますが、これも絶版になって久しい。
せっかく文庫に入ったのに、いつの間にか絶版になるのが多くて油断できない。殿山泰司の快著『日本女地図』(はじめカッパブックス、のち角川文庫)も、今読みたくても古本屋さんでもめったに見かけない。ネットで見つけて手ごろな値段だったら、手に入れて読んでみてください。
今から15年くらい前だったか、『女帖』が谷沢永一先生のコラムに出てきました。なつかしくなって探したけれど見つけられなかった。
たまたま入った柏の古本屋で、単行本の美本をなんと200円(!)で手に入れました。こういうときのヨロコビは筆舌に尽くしがたいものがあります。
女はどういうときに、モナ・リザのような微笑を浮かべるか、などという、深い深い考察があります。全編、未知の大陸で迷っている男に一筋の光明を与えてくれる示唆に富んだエッセイ群です。文春文庫再刊せよ!