万年筆 | パパ・パパゲーノ

万年筆

 昔は、本や雑誌の原稿は、みんな手書きでした。200字詰あるいは400字詰の原稿用紙に、筆記用具で書き付けた。私が編集の仕事をはじめた昭和40年代には、もうボールペンが主流でした。鉛筆で書く人も少しですがいらっしゃった。

 万年筆で書かれた原稿の、インクの香りと色に、だんだん好き嫌いができてきます。自分で書くときは、インク瓶に入ったモンブランの黒や青を使っていました。

 背広の内ポケットに、いつも万年筆をさしていましたが、電車のなかで、本に書き込みをしたりするのにそれを使ったりした。酔っ払っていることが多いので、なくしたりもしました。自分で最初に買った万年筆はパイロットだったと思います。だんだんモンブランなどに手が出るようになった。


 今では、手持ちが5本あります。現役で活動しているのは(ハガキや便箋に書くとき)シェーファーの万年筆のみになりました。


 自分で買ったのは、モンブランの太字用のみです。これはもっぱら宛名書きに用いていました。


 シェーファーの太字も1本あります。サトウ先生の形見にいただいたものです。


 現役のシェーファーと、モンブランの細字用、さらに、プラチナの#3776、その3本は、ヨシダ先生が手渡しで下さったものです。この先生は、万年筆のコレクションをしていらっしゃって、全部(50本くらいか、もっと多かったか)が、いつでも書ける状態にあるとおっしゃっていました。目の前で、原稿用紙を埋めたその万年筆を「これあげましょう」と、気前よく下さるのでした。


 ヨシダ先生もお亡くなりになりましたから、今では、大切な記念品です。だれにもあげない。