エスカレーター
東京の地下鉄千代田線の新お茶の水駅を毎日利用しています。北側改札口はJRのお茶の水駅に通じています。そこが小高い丘になっているために、中のエスカレーターがものすごく長いので有名です。4機のエスカレーターが稼動していますが、いつ乗ってもなにかの舞台に上がったような気分を味わいます。スピードが他のよりもゆっくりしています。
立ったままの人々は左側に寄り、先を急ぐ人々は右側を歩き登ります。関西ではこの右左が逆なのだそうですね。
丸谷才一の小説『裏声で歌へ君が代』の冒頭、エスカレーターを登ってきた主人公が途中で下りに乗り移る場面があったと思う。そうは書いていませんが、このシーンはこのエスカレーターに違いないと思いました。
いつだか、ブダペストの地下鉄のエスカレーターに乗りました。新お茶の水駅のそれより長いかと思わせる高い高いエスカレーター。びっくりしたのはそのスピードです。こわいくらいに速い。お茶の水のそれの倍は優にありました。
ドナウ川の底の下を地下鉄が通るので深いのだ、とガイドブックに書いてあった。しかし、線路は川底のはるか下にあるような感じです。シェルターとして使う目的もあるのだろうと思いました。
それよりもっとずっと前、パリの地下鉄のエスカレーターにも乗ったことがありました。スピードは日本のより速く、ブダペストのより遅い。それでも、年寄りや子どもにはちょっとつらいだろうスピードです。登りの階段の前で、うまく飛び乗ることができずにモジモジしているおばあさんがいました。後から来た、40代くらいの屈強な婦人が、ばあさんの手をひっぱって、「来なさい!! マダム」(Venez! Madame!)と太い声を出して乗せてあげました。ばあさんは、蚊の泣くような声で「ありがとう、マダム」(Merci, Madame.)と答えるのでした。
一ツ橋の学士会館という建物の外にも、20段もないくらいのエスカレーターがつきました。ここを利用するのは年寄りが多いので、ゆーっくり動きます。