後宮からの誘拐
モーツァルトのオペラ『後宮からの誘拐』(『後宮からの逃走』という訳もありますが、ドイツ語の原義や、他の言語の訳語からは、「誘拐」のほうが適切なのだといいます)について、もっとも印象的な批評をしたのは、『魔弾の射手』の作曲家ウェーバーのようです。
下の引用は、池田博明という方のホームページで読んだものです。この人は、神奈川県の高校の理科の先生だそうです。モーツァルトについて、たくさん読み、たくさん聞き、それを情熱的に語ります。
http://www.ne.jp/asahi/sayuri/home/music/mozartopera.htm
で、薀蓄の詳細を知ることができます。
さて、ウェーバーの引用:
わが信ずるところをここにあえて表明するとすれば、モーツアルトが芸術的に熟達したのは『後宮』においてであって、その後は世慣れた作品を作っていっただけである。『フィガロ』とか『ドン・ジョヴァンニ』とかいったオペラなら、彼はいくつも書けたが、『後宮』のような作品はもう二度と書けなかった。(ウェーバー)
たしかにあんな若さで死ななければ、いくつ傑作オペラを書いたかわかりませんね。『後宮』は25歳のときの作品です。
このオペラは、のちにあらわれる複雑な重唱こそありませんが、若さの輝きがまばゆいばかりの名曲です。アリアの粒だっていることは後年の傑作群に一歩もヒケをとらない。一音も余計な音符はありません、と皇帝ヨーゼフに誇らしく語った自信作です。
グルベローヴァのコンスタンツェ、キャスリーン・バトルのブロンデ、ショルティ指揮のCDを聞いています。バトルがでしゃばらないので成功した、という評を読んだことがあります。これは歴史に残る名盤です。