泥かぶら
最初に見た、プロの芝居が『泥かぶら』という作品です。新制作座。真山美保作・演出・自演の舞台。
中学生でした。昭和34年頃、女子高の体育館で演じられた。巡回公演の一日でした。
泥のついたカブという蔑称をつけられた村娘の話だとしか覚えていません。今でも舞台に載っているようです。
冒頭、ヒゲのじいさんが出てきて、これから始まる劇の背景を説明するのだったかしら。
それが、なんともカッコよくて、ずいぶん何度もマネをしたものです。
小川の流れに光があたってキラキラする様子に主人公が感激するシーンがありました。そのときの照明が、ほんとに流れているように見えて、芝居へのあこがれが一気に加速しました。
自分でも学芸会の劇に出たりしましたが、やるより見るほうが向いていると分かるのに、時間はかかりませんでした。
東京へ出てきてから、いろいろ舞台をみましたが、ここでは、ひとつだけ、圧倒された作品をあげておきます。
秋元松代作『かさぶた式部考』です。青年座。式部が一瞬だけヌードを見せて暗転します。その女優の豊満さにだけ圧倒されたのではありません。日本語で堂々たるドラマが仕上がっていたことに圧倒されたのでした。
のちに、民芸がやった同じ作品も見ましたが、奈良岡朋子さんは脱がなかった。
『常陸坊海尊』とともに、何度も上演されるであろう秋元作品です。