私が愛した女たち | パパ・パパゲーノ

私が愛した女たち

と言っても本の中の女のことですよ。


 ハイジ:アルプスの少女です。アニメじゃなくて小説のほう。フォレスト・ガンプを少女にして、アルプスの山の中においたような、人を疑うことを知らない娘でした。


 かわいい女:チェーホフの短編に出てきます。『可愛い女』(新潮文庫、他)で読むことができる。結婚相手がいかに素晴らしい人か、吹聴するのですが、死んでしまう。ほどなく、別の相手ができて、これも世界一の男なのだとのろけるのです。またまた、別れるだか、死別だかして、さらにいい男ができる。

 外目には尻軽女でしかないはずなのに、愛敬があるもんだから、魅力たっぷりなのです。

 チェーホフの『犬を連れた奥さん』にもちょっと惹かれました。


 おさん:山本周五郎の短編小説(『おさん』新潮文庫)の主人公。生まれつき性的な才能がすぐれていたという設定。惚れた男も気立てのいいやつだったのに、ちょっとした嫉妬心から関係がぎくしゃくしてしまう。そういう才能がそなわっていても幸せになるとはかぎらない、という、せつないせつない物語でした。


 丸子屋のおこうさん:藤沢周平の小説『海鳴り』(文春文庫)に出てくる、紙問屋のおかみさん。ぐうたら亭主のかわりに、組合の寄り合いに出てきます。別の問屋の主人とできちゃう。でき方が、ちゃんと納得のできる筋立てになっています。数多い藤沢作品の中で第一に指を折るべき傑作です。