朱筆
漱石の手書きの原稿に指定の筆が入ったカラー写真を見たことがあります。
習字の先生が手本を書くときに、今でも使う朱墨で、もちろん筆の文字で書き入れがしてありました。
昭和45年から、校正や指定の仕事をしましたが、赤字に使うインク、ボールペン、赤鉛筆、よいものになかなかめぐり会わなかった。最初は、付けペンに赤インクでした。万年筆の1本に赤インクを入れて専用にしたりもしました。しかし、インクの赤色というのは、なんというか、鼻についてくるのですね。
それで、次はボールペン。ビックの太字のをしばらく使っていました。これも、ときどきダマになったりするので、締め切り間際の忙しいときに、べっとりしたインクを紙でふきとったりするのがイヤだった。
ボールペンというのは、赤に限らず、黒でも青でも、最後まで使い切ったことがほとんどない。そういう人も多いんじゃないでしょうか。同僚のイケダさんは、ほとんどすべて使い切るという、カミワザの使い手でした。
赤鉛筆も(半分が青いのも)何度かトライしました。電動鉛筆削りの餌食になったようなものです。
2000年頃に、パイロットの HI-TEC という、水性のペン(1本200円)を見つけました。これも赤い色のが2,3種類ある。キャップの色で決めています。インクの出るところの寸法でしょうか、0.5と書いてあるのを使います。これはめずらしくまったく飽きのこない赤でした。それ以来、赤字はこれ1本です。
グリーンのものも使っています。これも、決まったグリーン。別の(エメラルド)グリーンは、紙の上にその色をのせるだけで仕事を先へ進める気がしなくなるのでした、私の場合は。
色合いというのは、心理状態に案外強く影響するのですね。