フェルメール | パパ・パパゲーノ

フェルメール

 トマス・ハリスの、レクター博士を主人公にした連作小説の一つ『ハンニバル』(上下、新潮文庫)の中に、レクターに全身の皮膚を剥ぎ取られ、復讐に燃える敵役が出てきます。全身包帯でグルグル巻きになっている。大金持ちで、有能な、男の召使いがいます。復讐がほぼ成功したので、忠実に仕えた子分に望みの褒美をあげる、という。では、と、召使いが出したのは、恋人と一緒に世界中のフェルメールを訪ねたい、という望み。これがかなえられることになった。(結局、この復讐劇はうまくいかないのですが。)

 これも映画になりましたが、映画では、このエピソードは省かれていました。(じつは、もう一つの復讐話も省かれています。)


 レクターは、偽名を使って、フィレンツェで成功した美術史家になっている。そういう設定ですから、フェルメールの名前は、じつに気のきいた小道具に思えました。


 ヨハンネス・フェルメール(1632-75)はオランダの画家ですが、残っている作品が32点とも35点とも言われるように、非常に少ない。世界中の有名美術館がその作品を1点でも欲しいとねらっているはずです。


 『真珠の耳飾りの少女』という絵は、見れば、ああ、あれかとすぐ分かります。(うまくいくかどうか自信はないけどここに貼り付けてみますね。)同名の映画にもなりました。(スカーレット・ヨハンソンがこの絵の通りの格好をします。本当に「絵から抜け出たような」印象でしたね。)




 これは、ハーグのマウリッツハウス(Mauritshuis)美術館所蔵です。この絵の向かい側に、『デルフトの風景』が掛かっていました。『デルフト』の絵は、画集で見るのと印象がはっきり違います。日のあたっている、遠くの家並みの美しさが感動的でした。(気がついていらっしゃるでしょうが、右のプロフィールに貼り付けてあるのがそれです。)


 去年出た、朽木ゆり子『フェルメール全点踏破の旅』(集英社)は未見ですが、踏破に挑戦してみたくなる画家であるのは確かですね。サンパウロにもある、と『ハンニバル』には出ていたと思う。


 ニューヨークにも5,6点あるのではないでしょうか。フリック・コレクションにある『女と召使い』(Mistress and Maid)なんて、出口にいったん向かったのを、戻って見直したくらいです。