加舎白雄
加舎白雄(かや・しらお)は江戸時代の俳人です。この名前は、蛇尾という俳号をもつ先輩に教えてもらいました。私を俳句の世界に導いてくれた方です。下のサイトに白雄の句がたくさん出ています。
http://www.geocities.jp/haikunomori/chuko/shirao.html
白雄の句で私が好きなのは、こんなものです。
すずしさや 蔵(くら)の間(あい)より 向島
鶏(とり)の嘴(はし)に 氷こぼるる 菜屑かな
菖蒲湯や 菖蒲寄りくる 乳(ち)のあたり
第1句:隅田川をはさんで浅草側から見ているのでしょうね。川の水が飲めたころの夏の光景。
第2句:田舎育ちにはなつかしい景色です。凍てつく晴れた朝でしょうか。にわとりの動くさまが見えるようです。
第3句:白雄の代表作と目される句。豊満な乳房を想像しますよね。そう解釈する人は多い。先の、蛇尾さんは、風呂をつかっているのは武士だと思う、とおっしゃいます。「しらを」(こう表記されることもある)は、信州上田出身の武士ですから、こっちの解釈も納得できます。いいほうを取ってください。
『白雄の秀句』(矢島渚男著・講談社学術文庫)という、もったいないほど懇切な解説書がありました。なんということか、もう絶版になっています。
蛇尾さんは謙抑な人なので、まだ句集を出していません。記憶に残る佳什を紹介しますね。
大利根の 春待つかたへ 一茶の碑
竹皮を 脱ぎ散らかして 真直(ます)ぐなる
第2句は、「たけ」で一瞬切って、「かわを」と続けるのだと思う。雅俗の配合が見事に決まっているとお思いになりませんか。