気まぐれベスト・テン
若い頃から、ときどき、その日の映画ベストテンを選ぶという遊びをやっていました。一人遊びのときも、遊び相手のいるときもあった。それまで見た映画から10本を選ぶ。西部劇10本、戦争映画10本、恋愛映画10本など、ジャンルごとにやってもおもしろい。久しぶりにやってみますね。今日は無ジャンルで、思いつくまま、私のベストテンです。1位から10位というのではなくて、どれがどの順位にきてもおかしくない10本とご理解いただきたい。
『リオ・ブラボー』(ハワード・ホークス監督)
高校1年のときに田舎の映画館で(おそらく)はじめてみた西部劇。そのあとも5回くらい映画館に行きました。ディーン・マーティンがアルコール中毒で手がふるえる、もと保安官の役だったと思う。現職の保安官がジョン・ウェインで、助手に抜擢されるのがリッキー・ネルソン。ドサまわりの酒場の歌手が、アンジー・ディキンソン。音楽が、ディミトリ・ティオムキン。「皆殺しの歌」という、トランペット・ソロが、カッコよくてよくて。それが吹きたいばっかりに、トランペットの練習までしましたね。ときどき、映画チャンネルで放映するのを見ますが、少しも古くなっていません。リッキーが、悪役の気を引きながら、すかさずライフルをジョン・ウェインに投げ渡すシーンなんて、真似して何度かやったものです。
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- リオ・ブラボー
画像は『リオ・ブラボー』だけにして先へ進めます。
『東京物語』(小津安二郎監督)
この映画の悪口を書いたひとを知りません。笠智衆と東山千栄子の老夫婦が、尾道から汽車に乗って、東京で一家を構えている長男・長女(山村聡・杉村春子)を訪ね、旧友たちに会い、嫁(原節子)と末娘(香川京子)のいる尾道の家に帰ってくるというだけの話ですが、日本の(とくに戦後における)家族というものの核心をついた作品ですね。
『にっぽん昆虫記』(今村昌平監督)
左幸子主演。実の妹・吉村実子が娘の役。父親が伊藤雄之助北村和夫【20日訂正】。パトロンが河津清三郎。あやしげな宗教の主宰、じつは売春の差配師が北林谷栄。他にも、日本映画を代表する役者が勢ぞろいしています。貧しく生まれた者がのしあがるためには、何をしなければならなかったか。大きく言えば、日本における近代とはなんであるか、ということでしょうが、理屈は抜きにしてもストーリーの面白さは群を抜きます。
『田舎の日曜日』(タベルニエ監督)
フランス映画。役者の名前は覚えていません。都会から車で1時間くらいの田舎に、絵描き(?)の父親が一人暮らしをしています。そこへ、長男(?)一家と、妹(独身)が、ある日曜日に訪ねていく、という話。妹のほうは、実りそうもない恋に消耗しています。せいいっぱい虚勢を張っているのが痛々しい。幸せそうに振る舞う長男家族も、タテマエだけの家族じゃないか、と見透かされてしまう。秋の、目のさめるような風景の中で話は展開します。
『ホテル・ニュー・ハンプシャー』(トニー・リチャードソン監督)
ジョディー・フォスター主演。ナスターシャ・キンスキーも出ていた。ある不思議なアメリカ人一家の物語です。『ホフマン物語』の「舟歌」のメロディーが印象的に使われています。
『モーリス』(ジェイムズ・アイヴォリー監督)
E・M・フォースター原作の映画化。同性愛という愛が、どういうものであるか、私にも分かったような気がしました。
『日の名残り』(これもジェイムズ・アイヴォリー監督)
カズオ・イシグロの同名の小説の映画化。アンソニー・ホプキンズ扮する執事が、エマ・トンプソン扮する女中頭に激しく恋心をいだきながら告白できないまま、別の男と結婚したエマに会いに行く。第2次大戦をはさんだイギリスの政治状況がよく分かる。
『愛の狩人』(マイク・ニコルズ監督)
ジャック・ニコルソン、アート・ガーファンクル(サイモンとデュオを組んだあの)、アン・マーグレットが出ます。みんなまだ若かったころの映画。若い男のアソビのつもりがだんだん深間にはまっていく感じをよく伝えています。アン・マーグレットの身を焦がすしぐさがかわいそうだったのが記憶にあたらしい。
『夏の嵐』(ルキーノ・ヴィスコンティ監督)
アリダ・ヴァッリの美貌が輝く一本。その姿が見たくてとうとうDVDを買ってしまいました。銃殺されてしまう恋人の名前(フランツ)を絶叫するシーンのあわれさが後あとまで残ります。
『フォレスト・ガンプ』(ロバート・ゼメキス監督)
ご存じ、トム・ハンクスのオスカー獲得作品。走るフォレストが魅力的でした。無垢をよく映像化したと思います。
10本は多かった。こんど書くときははベストファイヴくらいにしましょう。
