スーブレット
『フィガロの結婚』(また、フィガロで恐縮です)の主役は、芝居としても音楽としてもスザンナだと思います。伯爵夫人ロジーナの小間使いですね。このスザンナと、伯爵の従僕フィガロとが結婚する一日を描いた、オペラ・ブッファ(ドタバタ喜劇)がこの作品。
スザンナのような役どころを「スーブレット」と言うのだそうです。「スブレット」、ときには「スプレット」と表記されたりするので、なんだろう、と思ってきました。調べてみました。
元フランス語の soubrette 、そのまま、英語でも同じ綴りで使われる。
もっと前はプロヴァンス語、そのまた前はラテン語だそうですが、省略。
『スタンダード佛和辞典』(大修館書店、1957 初版)の、訳語がおもしろいので引用しますね。
soubrette (きびきびして,はすっぱで,情事のたくらみなどをする)喜劇の小間使(侍女)〔の役〕
「情事のたくらみなど」の、「など」は何なのでしょうね。たしかに、スザンナは、アルマヴィーヴァ伯爵の気をひいて、触れなば落ちん、というところまで行って、するりとかわす手管などみごとなものです。
イレアナ・コトルバシュや、アリソン・ハグリーが演じたスザンナは、どちらも「きびきびして」「たくらみ深い」ところ、優劣つけがたい魅力がありました。
ヨハン・シュトラウスの『こうもり』におけるアデーレも「スーブレット」の典型です。TDKから出ているDVDで、グルベローヴァがあんなに上手にアデーレを演じるのですから、彼女のスザンナも見てみたかった。残念ながら、録音も録画もないようです。