ドニゼッティのオペラ | パパ・パパゲーノ

ドニゼッティのオペラ

 もう何度も聴いているけれど(昔のLPなら、擦り切れるくらい)、今日も『ルチア・ディ・ランメルモール』を電車の中で聴いてきました。もちろん、グルベローヴァがルチアを歌ったCD。何度か録音しているようですが、今のご亭主、ハイダーが指揮した、ナイチンゲール・クラシックスの盤。例の、狂乱の場がはじまる前に、中断してこれを書いています。演奏も超一流ですが、なんと言っても、作曲者の力量が全面展開した傑作です。モーツァルトが聞いたら、自分で作曲してもこうしただろう、と言いそうな完成度だと思う。

 『シャモニーのリンダ』もよく聞きます。これもハイダー指揮、ナイチンゲール盤。ストックホルムでの録音。イタリア人が一人しか歌っていないのに、これぞイタリア・オペラに仕上がっています。始まって30分くらいのところで、モニカ・グロープというメゾ・ソプラノが長いアリアを歌う。これが絶品。リンダ役はグルベローヴァです。

 ルチアでも、リンダでも、(バス・)バリトンの二重唱が出てくる。これが聞かせどころです。この歌がよいので、タイトルロールのアリアがいっそう栄えるのだと思います。

 『愛の妙薬』も素敵なコメディーですが、ドニゼッティのオペラは、悲劇性の高いほうが面白い。『マリア・ステュアルダ』『ロベルト・デヴリュー』もよかった。『アンナ・ボレーナ』はまだ聴いていません。

 『うぐいすとバラ――エディタ・グルベローヴァ 半生のドラマとその芸術』(音楽之友社、1999年)という本があります。1970年代に花開いた、世紀のコロラトゥーラの軌跡と、音楽にたいする構えが活写された興味深い書物です。