むかしむかし・・・今から〇〇年以上前のこと・・・
町内の獅子祭に踊る踊り子の選抜が行われました。
今とちがい、子どもの多い時代でした。
うちの町内でも、同い年の男の子は10人以上、その中から踊り子に選ばれるのはたった二人だけ・・・
その中で、踊ることが嫌じゃない子、運動の得意な子の他にも厳しい条件がありました。
先ず、長男であること。
大人になってどこかに婿養子に行かれたら、せっかく覚えた踊りが次世代に反映されない。
また、家が本通りに面していること、これもステータスだったようです。
そのほかに細かい条件がいろいろあって、それらをクリアしたふたりの男の子が晴れて踊り子となるのです。
もちろん、女の子は論外、提灯を手に太鼓の屋台を大きな綱で引っ張るだけ、それもたいへん楽しかった。
さて、私の弟は活発で踊り子の候補になっていました。
ところが、ちょうど当時私たちの住んでいた前の家が、新築の最中でした。
「お声をかけていただき、感謝します・・・」父の口上がはじまりました。
「・・・というわけで、みなさまにご迷惑をおかけしては申し訳ないので、一通り他のご子息にお声をかけて、それでも決まらなかったらもう一度いらしてください。」獅子方の若衆は帰っていきました。
その時、弟は静かに俯いて大きな涙で床を濡らしていました。
彼は、無言でした。
「Kちゃん、出たいんでしょ。」
母が言いました。
弟は静かに頷きました。
「わかった!お母さんが頼んであげる」
さっすが私たちの母・・・
弟は晴れて踊り子になり、街を行脚することができました。
仲良しのMちゃんといっしょに踊り子の役を務めあげました。
この踊り子、今は女の子ではなく、乙女でもない若い婦人ばかり・・・
はずかしくないのか!と言いたくなります。
時代といえばそうかもしれませんが、大きなものを失っているように思います。
大人も、子どもも・・・
その獅子祭は、3日後になりました。