ずいぶんお久しぶりな投稿となってしまいました。なんとほぼ一年ぶり!💦😓自分の中ではついこの間ストーンズのブログを書いた感覚なんですけど、、あっという間の一年でした。その間色々私的にあり、多忙を極め、ちょっとブログからも遠ざかってて、書く気力がなかった次第です。まあ実際はそんなこんなもブログに書けたら真の「アウトレット」になるのでしょうけど、どうもそう言うタイプのブログは書けそうも無い、笑。と言う訳で皆さんのところへもほとんど訪問出来ていません、ごめんなさい。
また後で順次読ませて頂きますね。
まだまだ予断を許さない老親のこともあり、更新頻度は今後も低くなりそうですが、よろしければお付き合いの程を!
あ、それから私境界型糖尿病でしてね、真のトーニョーに移行はなんとしても避けたい、で、糖質、特にご飯減らしたら体重43キロ弱の痩せになってしまい、ヤバいって事になりました笑。なんとか今44キロに回復したけど、元々47、8キロを維持していたので後3キロは欲しいかな。(*ちなみに身長は159センチくらい) 日々のエクササイズも必須!運動と食事が大事なんですよ、高血糖対策には!あー忙しい笑😮‍💨

でもそんな合間でも好きな音楽は聴いてたし、映画観たり本も時々読んでました。(ブログは書けなかったけど。)以前書いたカーソン・マッカラーズの別の本も2冊「結婚式のメンバー」と「哀しき酒場の唄」。いや〜この作家実に私好みです、好き笑。
音楽はですね、偶然凄いの発掘、と言っても音楽ブログ書かれている方からは「え、知らなかったの?」って言われそうなバンドです、おそらく笑。でも名前しか知らなかったんですよね〜、かなりいいですこのバンド。もう「ザ・バンド」以来ヘビロテで聴いております、Spotify有難う!ま、その話はまた今度という事で😊。

今日はつい最近読み終えてかなり心に響いた、カズオイシグロの「クララとお日様」の感想を少し。ノーベル文学賞受賞後初の長編です。「私を離さないで」がすごく良くってそれに通じる長編って事でずっと読みたいと思ってました。図書館で予約したのが5月ごろ、で漸く私の番が回ってきたのがなんと11月ですよ!(もう借りたことすら忘れてた笑)。
期待を裏切らず面白く、ページをめくる毎にその世界にグイグイ引き込まれて行きました。読ませるツボを実に心得ているっていうか、そこはほぼ「私離」と同じですね。
  
設定はおそらく近未来、AIを搭載したロボットAF(artificial friend) 人口友達を、富裕層の子供が購入するのが普通の社会で、その子自身も「向上処置」つまり遺伝子操作を受けていて、その事で将来も約束されている、そんな設定です。逆に貧困層の子供にはそれが不可能で侮蔑の対象に。格差社会は未来永劫解消されないって暗示でしょうか。
ショウウインドーで売られていたAFクララは病弱な少女ジョジーに気に入られ「購入」され、彼女の家で一緒に暮らす事に。まるで忠犬ハチ公の様に飼い主もとい買主に忠実なんです。あの「日の名残り」の執事スティーヴンスをちょっと彷彿とさせなくも無いけど、やはり子供らしいピュアさって点ではハチ公に近い。

クララは新世代B3型ではなく旧世代B2型。(まるでスマホ機種みたいですね笑)ファンクション的には新型に劣るものの学習能力は極めて高い。特にクララは人間の細部の心のひだを人間以上に察知し、ジョジーを全身で理解しようと努めます。他者に対してもあらゆる事に気を遣えてしまうアンドロイドで、そこはもう人間以上なんですが、カズオイシグロのこの辺りの描写にはやはりとても日本的なものを感じてしまいます。
クララの姉サリーもどうやら若くして亡くなっており、(*おそらく病弱なクララ、サリー共に向上処置、遺伝子操作による副作用じゃないかと思われる。)母親のクリシーはなんとかクララを助けようと必死になるものの、ジョジーは弱っていく一方。万一のことを考え、最終的に肖像画計画と称してクララのアンドロイドまで造らせようとするあたりはもう異様としか言えません。

「向上処置」を受けてない幼馴染のリックとクララは、将来の計画を話し合うほどお互いになくてならない存在で、クララやリック、ジョジーのヴィヴィッドな会話を聞いてると、思い出すのがやはりあの臓器移植の為に育てられる子供たちの生活を描いた「私離」。ものすごく通じるものがあるんですね、子供の心理を描くのが非常に上手い作家だな、と。

クララは太陽、お日様をエネルギーとして存在可能なアンドロイドであり、それ故に太陽信仰とも呼べるほどにお日様の存在を敬い尊敬の念を抱いています。ここはもう人間が宗教に帰依する感覚とほぼ同じなんでしょうね。クララは人間世界で起こるあらゆる事象を観察し、AIの総能力を駆使した結果、ジョジーを助ける秘策を直感で思いつきます。そして太陽に向けて礼拝、祈るシーンとかは、見方によっては稚拙なんですが、やはり「祈り」の力は絶大なんだな、と思うし、祈るって行為はある意味謙虚さを体現してるとも思うんですよね。人間の傲慢さがそこには入ってないという意味で。
話は飛びますが、先日亡くなられた寂聴さん、(私結構好きだったんです!)地元徳島出身で今も徳島在住の友人に思わずLINEをし、少し話しました。寂聴さんは自身の墓碑の言葉を生前決めていた様で、それは「愛した、書いた、祈った」だったとか。まさにその通りの情熱的な人生を歩まれた訳で、あっぱれの大往生でしたよね。

イシグロが何かのインタビューで、こんなふうに語っているのがとても印象的だったので、ちょっと引用します。「私が小説を通してやりたいのは、時代や空間を超えて伝わる感情を描き出す事です、それは普遍的で変わることの無い感情です。」「小説においては特定の時代や空間が設定されますが、そうした設定自体が重要なわけではなく、そこに描かれる感情や記憶と言った心の作用こそが大事でそこにこそ普遍性があるんです。そうでなければ200年前の小説を読む事になんの意味があるでしょう」
臓器移植とかAIとか、設定自体には私だって別に興味の対象って訳ではないんです。やはりいかなる設定であっても登場人物の「感情」を通して読み手の心にそれが作用し響く、こここそが小説の醍醐味だと言えるわけで、そう言った意味でカズオイシグロは成功してると思うし、ノーベル文学賞にやはり値する作家ではないかと思うのです。(とは言えこの作家の本の中には読みにくくて挫折した本も、実はあるんですけどね、告白です苦笑)

ここには書きませんでしたが、子供以外の大人のセリフや感情も非常に巧みに表現されていて、作家の人間観察の鋭さが窺えます。
ラストは予想可能だったとは言え、陳腐な終わり方ではなく、ひたすら切ないんですよね、もう私全編通してクララに完全に感情移入してしまってました!
「私離」同様おそらくこの作品もいずれ映画化、そんな気もしますが、ただやはりこの人のストーリーは小説でこそ生きる、そんな気がするのは私だけでしょうか。(*「日の名残り」に関しては、名優たちの素晴らしい演技力もあり、大成功だったと思いますが。)

コロナ、日本ではだいぶ落ち着いてきましたね。とは言え諸外国の例や心配な変異株の出現もあり、まだまだ油断できそうにありません、お互いに引き続き気をつけていきましょう。

引越しを機に大掛かりな断捨離を行なった友人から、数あるCDの中で好きなのがあれば、と問われ(彼はジャズ好きなので)「オスカー・ピーターソン」と何気なく言ったら気前良くこんなに、笑。


後引き取り手のないのはブックオフとかに売ったら?と勧めたんですが、「めんどくさいから捨てる」だって!実際に捨てたそうです笑笑。物離れのいい人、尊敬ものです。私も断捨離にそろそろ着手(なんなら終活も笑)しなきゃな、と実はもう5年くらい言い続けてるけど、いまだに実践できてません!😅前途多難笑。

それでは大好きなオスカー・ピーターソンの曲で、「You look good to me」。冒頭で本人がバッハの小品の様だと言ってる様にクラシックっぽい、なんとも優しいチューン。葬式にもし流して欲しい曲を選ぶとしたらこれですね😃。