観たいと思っていたこの映画、ようやく上映されたので早速観てきました。
グレン・クローズの迫力ある演技に息を飲みましたね、上手い!

1950年代後半に大学教授とその生徒という形で出会った、ジョゼフ(ジョナサン・プライス)とジョーン(グレン・クローズ)。この若い時のジョーンを演じたのが、クローズの実の娘らしいのだけど、あんまり似てなかった様な。

一日八時間も書斎にこもってゴーストライターとして、元妻から奪う形で手に入れたジョゼフのために執筆に精を出すジョーン。時代背景として、女性作家として成功することが困難な時代だったとは言え、ここまでやりますかね?

欲しくてたまらなかった男に尽くすことこそが、おそらく彼女にとっての愛情表現だったので、良心の呵責とかを感じる事もなく、自分のこととかも後回しだったんでしょうか。でも、意外とデキる女に結構ありがちなのかも。
愛こそはすべて。夫の成功が自分の喜びという揺るがぬ図式を自分の中で組み立てていたのでしょう、夫がノーベル賞を取るまでは。完璧な妻であり続け、終わるはずだったのが、授賞式のためスウェーデンへ向かうあたりから徐々に風向きが変わって行き、不穏な雰囲気に。
ジョゼフの経歴に疑惑を持つ記者ナサニエル(クリスチャン・スレーター)から誘導尋問されつつも、クールに顔色一つ変えず取り合わなかったのに、
会場でのあるちょっとしたことがきっかけになって、徐々にその冷静さが崩壊していくんですが、その心理状態を、実に見事に演じきっていて、このあたりがオスカーをもたらすだろうと思われた演技なんでしょうね。

絶対に糟糠の妻と人々が思う様なスピーチだけはしないで欲しいと夫に頼んだのは何故か?ここ、普通だと、妻としてはそう言われて嬉しいはずなんだけど、でもなんと言っても普通じゃないですから、彼らの場合。
ジョーンとしては黒子に徹しきるのはまだしも、そんな風に偽物の感動物語で主役を演じる事など、これ以上ないほど自分を貶めることに他ならなかったんだと思うんですよね。だからせめてそれだけは避けて欲しかったんだと思う。
でも、ジョゼフはノーベル賞授賞式という雰囲気に完全に酔いしれてしまいそれをやってしまいます!しかも受賞プレゼンターから、ジョゼフは人間の葛藤を書く達人と紹介されます。その時のジョーンの顔に、思わず息が止まりそうに!自分が必死に書いている間、ジョゼフは何度も浮気を繰り返し、おそらく葛藤だらけだったのは何を隠そう自分だったわけだから。そりゃキレますよね。
そこからもうジョーンの中では、プツンと何かが切れて、修復不能になります。
で、その後とんでもない悲劇が起こり、。(これはちょっと予想外!)
結局その悲劇が起きなければ、確実に違った結末になったかもしれません。
最終的に帳尻があったのかそうでもなかったのか、本当の彼女自身の人生は取り戻せず、うやむやになった感のある結末でしたが、そこはもしかしたら原作を読めば、もっと答えが見つかるかもしれません。


グレン・クローズ、なにしろその個性的な顔がいいですよね。どんなタイプの人間を演じようと、一癖も二癖もありそうな側面が自然と出てきて、それが結局は深い演技につながってる様な気がします。特にこういう心理サスペンスものにはうってつけな俳優さんかも。何と言っても彼女の演技が最も光り、目立った映画でした。(ジョナサン・プライスのダメ男ぶりも、余計にそれを引き立たせていたのかもしれませんが。)