今回シフの来日リサイタル、2回分けて全部のプログラムを聴いた。というより、シフは、2回のリサイタルによりひとつのプログラムを完成させたのだと思う。​
また、19日のリサイタルでは、演奏前に影アナで「本日のプログラムを、ピアニストの強い意志で、​亡き友人テノールのペーター・シュライヤーと、ピアニストのペーター・ゼルキンへ捧げます。」とのアナウンス。​
これはどういうことかというと、曲間にお辞儀なし、拍手なし、全編を通しての一気演奏だ!​
完全なるシフの世界にひたすら浸れるとの宣告に、会場に居合わせた信者たちは従うしかない。​
2回のプログラムを通して見れば、ブラームスの作品を軸として、​ほかの作曲家の作品を組み入れながら、最後はベートーヴェンの「告別」ソナタ。ちょっとストーリーが見えてくる気がする。​
ブラームスの作品の間に入れたほかの作曲家の曲は、ブラームスの曲に調号を合わせる工夫もされている。​
もちろん、調号を合わせるだけならば、選択できる作品はたくさんあると思うので、​
ブラームス以外の作曲家の作品はどのような思いが込められて選択されたのか、​
後でピアニストのインタビューとか、調べれば分かると思いますが、演奏中にとりあえず自分の妄想に任せる。​
また、本番プログラムに作曲家はバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、​メンデルスゾーン、シューマン、ブラームスといったドイツの大家たちの勢揃い。​
シューベルトだけが仲間外れの意図も興味深い、と思いきや、​本日アンコール最後のシューベルト即興曲op.90-3は、また天から降りた音楽しか思えないほど美しかった。​シューベルトを最後まで取っとく、という意図は興味深い!​
でもねやはり、シフのブラームス演奏にそれほど感銘を受けていない。​
「何様のつもり」の勝手評論だが、​シフといえば、バッハは最高、古今誰も勝てない。​
シューベルトは素晴らしい、現在この世の1番か2番手。​
モーツァルトとベートーヴェンは秀逸。聴けば聴くほど惹かれる。​
でも、ブラームスは、、、正直あっさりしすぎで、ブラームスの味「内気に潜められた情熱」が聞こえない。​(個人の趣味だからお許しを)​
ちなみに、アンコールに弾かれたブラームスの「アルバムの小品」(Albumblatt)は、​3分ほどの小さい曲だが、10年ほど前にニューヨークのオークションで発見された「新しい存在」だという。

アンコール:
J.S.バッハ: ゴルトベルク変奏曲 BWV988から アリア
モーツァルト: ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調 K.545から 第1楽章
ブラームス: アルバムの小品
シューマン: アラベスク op.18
シューマン: 「子供のためのアルバム」op.68から 楽しき農夫
シューベルト: 即興曲 変ト長調 D899-3