マイケルが死んですぐの週末の夜、暑すぎてなんか眠れなくて、近所のバーはどこも元気だったころの彼の曲を窓全開で流してたから、珍しく一人で飲んでこっかなと思った。夏の週末。いつも以上にヒステリカルな酔っ払いであふれていた。

気持ちはマイケルのこと考えて沈んでたけど、一人で飲んでたら当然、性欲丸出しの男が寄ってくる。アクセントがきつすぎて何言ってるか分からないアイリッシュの人とか(というか彼にとってはアメリカ英語のほうが邪道なのかもしれないけど)、口臭の勘違い男とかにうんざりして、賑やかなエリアを離れて家の方向に向かってたら、このあたりに多いある東欧系の若そうな子がおごってやるよ、何飲みたい?って近寄ってきた。まあ私も眠れないしちょっと飲んでるしでふらふら歩いてたのかな。

このあたりにはもう深夜もあいてるデリとかしかないから、入ってスミノフ選んで外に出た。
今気がついたけど、このとき私、デリでお酒買ってそのあとどこに行くつもりだったんだろう。
きっと何にも考えてなかったんだろうな。

人通りはあったから、知らない人の家に入ってしまわない限りはそんな危ないことはないだろうけど。
悪いこと考えるような男に限って、警察呼ぼっか?って言うと笑うくらいびびるって知ってた?
マッチョな考え方の人が多い男の警官はこういうとき、100%女子の味方してくれますからね。

とにかくその2軒くらい先の他のデリに、4年くらい知り合いの人がいる。
虐げられた地域の出身の、でもいつも笑顔の彼。
ここに引っ越してきてすぐくらいのころに愛想良く話しかけてくれて以来、顔を見るたびに挨拶してくれる。このとき彼がいてくれてよかった。店先で、眠れない夜の話し相手になってくれたから。

あきらかに連れ込む相手を必死で探してるbad boyは、無視してたら機嫌悪くして帰って行った。
顔見知りだった彼は、長年このあたりのことずっと見てきたから知ってるみたいだけど、けっこう危険人物みたい。あきらかにSの雰囲気出てたしな。男のSって、ときどきたちが悪い人がいる。

だから君の安全が心配だったんだよとか言われて、アジア人だから子供っぽく見えるかもしれないけど、私そういうことは分かってて当然な歳なんだよって言ったら、やっぱり驚かれて、いつものようにどういう反応したらいいか分からない。私から言わせると、他の人種が老けすぎなだけだもん。

ちょっと前に大学卒業したって言ってたから、24歳くらいかなって思ってたよって言われた。
大学も2回目だからなあ。子供っぽく見えるのは、歳相応の落ち着いた暮らしをしてないからっていうのもあるな。

この人とはそれからも、ときどき話しこむようになった。
っていう話をママにしたら、宗教的な紛争とかにちょっと動揺したのか、ちょっと別の意味も込めた感じで、インターナショナルねだって。
ま、それだけがとりえかもな。