インタビュー・ライターの小川志津子さんに、

私のこれまでを振り返る、

ライフ・ストーリー」を書いていただきました。

4回シリーズです。お楽しみください!

 

 

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【ひいらぎいちかのライフストーリー】

 

 

彼女は、弱冠、23歳である。

 

 

「あんまり、口に出して自分のことを言わないんですよ。

 どういう人間なのかって、理解されないことが多くて。

 誤解されることも結構あるんですよね」

 

 

ほう。どんなふうに?

 

 

「なんか、『冷たそう』とか。

 逆に明るく振る舞ってたら、

『人と関わるの好きでしょ』とか。

 そんなに大勢と関わるのは好きじゃないんですよね(笑)。

 2回ぐらいまでだったら、 

 グループで会うときのテンションで行けるけど、

 何回も会ってると、しゃべれなくなる」

 

 

ほとんどの大人は、身に覚えがあるのではないか。

自分自身の取り扱い方が、

まだ、うまくつかみきれていない季節。

 

 

「自分がしたことが、伝わらないことがあって。

 何かをやってあげても、気づかれないとか。

 言ったことのニュアンスが、違うふうに受け取られたりとか」

 

 

そういうときに、「ま、いっか!」とはならず、

いちいち、小さく、傷ついてしまう季節。

 

 

これは、ひいらぎいちかという一人の女性の、

これまでの記録と、取扱説明書である。

 

 

 

◆察知して、思考して、分析する少女

 

 

「小さいときは、『あー』しか言わない子でした。

 カオナシみたいな。わかります、カオナシ?」

 

 

ああ、『千と千尋の神隠し』。

 

 

「不思議ちゃん的な感じで扱われていたかな。

 右と左を覚えるのが遅かったことを覚えてる。

 あんまり笑わないし、しゃべらないし、

 地味キャラでしたね」

 

 

人間の奥にある「どす黒い感じ」に、

とても敏感な子どもだったという。

 

 

「『この人、こうは言うけど、

 ほんとはそう思ってないんだろうな』とか。

 表に出さない本音の部分に、

 すごく敏感だったんですね」

 

 

小学2年生で、長崎へ引っ越す。

 

 

「そこで突然、はっちゃけたんですよ。

 委員長とかをやっちゃう感じに」

 

 

思ったことを、ばんばん口に出す地域性。

それが、彼女を伸びやかにさせた。

 

 

「クラスの男の子と大げんかした覚えがあります。

 私が書いてるものを、消されたりとか。

 これっていじめじゃない?みたいなことをされて。

 私も気が強かったから、

『なんでそういうことするの!?』って聞きました」

 

 

その男子は、いちかさんのことが、

ちょっと気になる存在だったのではないか、

などと、おばちゃんライターは思ってしまうけれど、

彼女の見解では「ただただ、馬が合わなかった」そうだ。

 

 

「でも中学校からは、そんなに。

 大きめの学校に行ったから、

 いきなり人数が増えてびっくりしちゃって。

 そのギャップもあって、

 クラスの隅っこにいる地味キャラでした」

 

 

思ったことを、口に出さなくなったぶん、

心の中で、よくしゃべるようになった。

 

 

そうすることで、育ったのは想像力だ。

 

 

「黙ってる人って、もしかしたら、

 実はおしゃべりなのかなあって。

 地味な人って、根は地味じゃないのかも」

 

 

自分以外の人間が、表には出さない何か。

それを過敏に察知するアンテナが育った。

 

 

「顔と言葉が合ってない人を見ると、

 今でも、すごい違和感を感じます。

 あれっ、って思ってもやもやする」

 

 

他者の心に敏感ないちかさんだから、

みんな、いちかさんに、話をしたくなる。

 

 

「地味キャラでいることで、

 相手が本音を言いやすいのかな、

 って思ってましたね」

 

 

相手の心の察知と、

自己分析に長けていたいちかさんだが、

 

 

「頭はね、よくなかったんですよ。

 地味キャラなのに頭よくないって、

 ちょっとどうなのかと思うけど(笑)」

 

 

じゃあ、反抗期はありましたか?

 

 

「あんまりなくて。

 あったとしても、

 扉をバシャーン!って閉めるくらい。

 歯向かっても、そこまでひどくなかったから、

 今、大人になってからこじらせてます(笑)」

 

 

いちかさんは今、実家を出て、

親に連絡せずに、東京でひとり暮らししている。

 

 

「何を言っても、否定されるんです。

 口では『進みたい道に進みなさい』って言いながら、

 進みたい道を伝えると、渋られる。

『お金がかかるからダメ』とか、

『そこは危なそうだからダメ』とか」

 

 

親の方が頑固だから、いちかさんが折れる。

でも、のちに、その不満が爆発寸前になると、

「あなたが決めたことでしょう」と言われる。

 

 

自分の人生を、自分で生きるために、

親から離れることを、いちかさんは選んだ。

 

 

「ほんと、反抗期って大事だなと思いました。

 10代の頃は『これを言ったら誰かが傷つく』とか、

 『言った後がめんどくさいな』って思ってたから、

 反抗心があっても、うまく出せなかったんですよね」

 

 

限りなく敏感な想像力で、

彼女は、瞬時にすべてを察してしまう。

 

 

カッとなって、うわっ!と言葉を吐く前に、

「カッとなって、うわっ!と言葉を吐いた後」のことが、

一瞬で想像できてしまうのだ。

 

 

「何か悪いことがあっても、

 絶対、謝らない家族なんですよね(笑)。

 だからなおさら、めんどくさかったかも。

 結局勝てないって思ってるのかな。

 想像力がありすぎるのも面倒ですね(笑)」

 

 

学校ではどうだったのだろう。

先生には、反抗しましたか?

 

 

「あ、先生にはしてました!(笑)

 すごい真面目な先生で、

 自分の固まった考え方を、

 なかなか崩さない人だったんですよね」

 

 

その先生への、いちかさんの反抗ぶりが可愛いのだ。

 

 

「その先生の宿題はしないとか(笑)。

 何か言われたら、ムッとするとか」

 

 

そもそも「先生」という存在全体が好きじゃなかった。

 

 

「親に、先生の嫌なところを話してたときに、

『逆に、好きな先生っているの?』って言われて。

 ……そういえば、いない!みたいな」

 

 

「先生」の何が、嫌だったのだろう。

 

 

「先生がどうこうじゃなくて、学校の、

『授業を受けなきゃいけない』とか、

『静かにじっと座ってなきゃいけない』っていう、

 環境が嫌だったんだと思います」

 

 

同じ椅子に座り続けるのが、今も苦痛だという。

さらに、何らかの理不尽な指図をされると、

それはもう、たまらない気持ちになるのだ。

 

 

「1日何時間も椅子に座らされて、

 こんなに耐え忍んでいるのに、

 まだ文句あるのかコラ!って思っちゃう(笑)」

 

 

だから、地味キャラなのに勉強ができなかったんだ!

いちかさんが、いきなり納得する。

 

 

「あの頃には戻りたくない。

 絶っっっ対戻りたくない!(笑)

 1日6時間とか、無理!

 寺に閉じ込められて修行するみたいな日々じゃないですか!」

 

 

「冬の持久走はジャージ着用禁止」とか、

わけのわからない掟の数々も、

いちかさんの苛立ちを加速させる。

 

 

「あとは、そんなに人生経験のない人から、

 いろいろ言われるのも嫌だったかも。

 若い先生とかは特に、

 先生しか、したことのない人たちじゃないですか」

 

 

ああ。ほんとだ。言われてみれば。

 

 

「先生しか、したことのない人たちなのに、

 人生の進路に口を出してきたりとか。

 なんでこの人たち、

 こんなに偉そうなんだろう?って思う」

 

 

よかった。

いちかさんは、ちゃんと、精一杯、

反抗期をすみずみまで堪能していた。

 

 

「グレる」とか「荒れる」ではなく、

自分の苛立ちを徹底的に分析するかたちで、

「思考する反抗期」を、いちかさんは過ごした。

 

 

「恋愛とかも、要らないからってカットしてた。

 何が運命の出会いだよ、って思ってた。

 でもみんな、努力してるんですよね。

 中学の時から、メイクする子たちを見て、

 みんなヒマなのかなって思ったけど、

 それも才能のひとつだよなあと」

 

 

自分の顔立ちを検証して、

自分に似合うコスメを試し、

あらゆる色で、顔を彩る。

 

 

「すごい勉強してるじゃないですか。

 みんな、頑張ってたんだなあ!って思って。

 私にはそのモチベーションがない!(笑)」

 

 

けれど彼女は「描く」ことの楽しさを知っている。

絵を描くことが大好きで、

中1から美術部に入った。

 

 

「でもほら、私は座ってるのが嫌いなので(笑)。

 中2で前の席だった子が、バドミントン部で、

 誘われたので、入ってみたんですね」

 

 

地味キャラのいちかさんからすると、

バドミントン部の皆さんは、

「真ん中」にいる子たちだったという。

 

 

「そういう子とは、それまで接点がなかったから、

 人間関係が広がったのはよかったですね」