私のライフ・ストーリー、
第三部です。ごゆっくりどうぞ。
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◆まわり道こそが未来をつくる
「高校卒業後は、
まずは韓国語の学校に進もうと思ったんです。
でも経済的事情で親からの反対を受けて、
その夢を断たれて」
ふうむ。
「で、ホテルの仕事なら語学が活かせるかと思ったけど、
接客がすっげー嫌いだったんですよ。
けど、若いうちに踏ん張っておけば、
いつか、やりたいことが見つかったときに、
根性をつけられるかもしれないと思って」
ホテル業の専門学校へ行き、
「すっげー嫌い」な接客業に臨む。
「態度は最っっ悪だったと思いますね(笑)。
上司や先輩から指図されると、ムッとしたり。
『自分で行けや!』って内心思ってた」
けれど、思いのほか、こんなことも起きた。
「地下1階のレストランで、
同じ顔ぶれで働いているから、
やっぱり、いつもみたいに、
気が重くなっちゃうんですよね。
でも、そういうときに、お客さまと話すと、
皆さん、いろんなところからいらしているから、
そういうお話が楽しくて」
接客は、やっぱり得意ではないけれど、
まずは、今いる状況の、
いいところを見つけようと思うようになった。
すぐに辞めることもできるけれど、
それでは後悔すると、いちかさんは思った。
辞めるなら、1年後にしようと。
「仕事を辞める3ヶ月前ぐらいが、
一番楽しかった。視野が広がったんです。
資格をとったり、いろいろチャレンジして」
その体験で、いちかさんは、
どんなことを学んだのだろう。
「感情をコントロールすること。
従業員とコミュニケーションをとること。
上司を、えらい人だと思いすぎないこと」
ほう。
「上司は、ただ、『キャリアを積んだ大人』であるだけ。
やりたいことや、現状の不満を、
下の人間が抱え込むよりも、
上司にちゃんと伝えたほうが、
仕事もうまくまわるんですよね。
臆さず、なんでも、言った方がいいなと」
そしてこの時期から、いちかさんの中に、
こんな気持ちが、芽生え始めた。
「人から指図を受けて動くより、
自分で、なにかを興したいと思うようになりました」
そのためには、自分を変えたい。
そう切実に思うようになる。
「もがいてました。
どうしても変わりたいのに、変われなくて」
“こうすれば自分を変えられる!”的な、
自分探しビジネスにかじりついて、
こっぴどくお金を巻き上げられたりもした。
「どうしても、自分で何かやりたい。
けど、人を信用できない……!って。
いろいろ重なって、疲れちゃって、
消息を絶ったりもしたんですけどね(笑)」
そう。とあるセミナーで出会ったいちかさんは、
ある時期、連絡が取れない時期があった。
「そうそう、その時期です。
ほんとうに疲れ果ててました」
これは向いているかもしれない、と、
一瞬思ったリラクゼーションの仕事にも、
小さな挫折をしてしまう。
「研修がキツくて、試験に合格できなかったんですよ。
自分が好きになった仕事が、
自分に向いてなかったってことがショックで」
んーーーむ。
ひとつのことがダメになったときに、
もう世界中のすべてがダメなのだと、
思い込んでしまう人が本当に多いことを、
数多の人生を聞き書きしていると痛感する。
あなたが「世界」だと思っているものは、
ほんとうは、世界の、ほんのひとカケラでしかない。
リラクゼーションの仕事なんて、
方法論も、種類も、店舗も、
日本中、世界中に、ごまんとあふれている。
人生、「もうダメ」なんてことはありえない。
「もうダメ」なことなんて、
ほんのひと目、ぐるっと世界を見渡せば、
ただのひとつも、ありえないのだ。
「ただ、今になって思うのは、
ムダなことはひとつもなかったな、
っていうことですね」
そう!
それです!
「若干、まわり道しすぎましたけどね(笑)」
まわり道、上等。
「トライ&エラー」の、
「トライ」にも、「エラー」にも、
彼女は全力で体当りしている。
傷だらけになって、それでも、
自分自身を明け渡すことなく、
自分が自分でいられる道を、
あきらめずに、探している。
そのことが、いちかさんの、
誰にも負けない強みなのである。