すぐに行っちゃう、食品売り場。
おばちゃんに紛れて、というより全く同化している。
品選びしている動作も、めだかの大群の一匹のように違和感など無い、。
動きが止まり、一点を見つめて考え込んでいる姿も。
主婦の目を持つ、おかまの眼が流れるように、また動き出す。
そろそろ小腹が。「お昼にお蕎麦を食べようかな。」
独り言を言いつつ、足は別の方向に。
「これから、お蕎麦を食べるんだから。」なのに、なのに。
私の脳ミソの中の一部が、眠ったふりして体を誘導する。
ショッピングモールを一人ふらふらと、けれど行先に迷いは無い。
「アンタ、そこのショップでストローを咥え、気取って足組みながら、道行く人を眺めてごらんよ。」
脳ミソの中の、そんな軽い女のそそのかしにも、耳を貸さない。
「ほらほら、スイーツよ。クリームよ。」甘ったるい女の声も無視。
それはレストランなどの飲食店ではなく、食材売場。
一番に行くのは、鮮魚売り場。
次が青果で、次ぎ食肉で、お惣菜売り場。
脳ミソの総支配人は、たまに良い事を言う。「腹減った時に、来ちゃダメだね。」
私は美味しいものを知っている。
誰だって、知っているけど。
行列の出来る店。私には、そういうリストは殆んど無い。
そう言うのって、味覚の調和や、技術に依るもの。
私が日常で求めているのは、食材本来の美味しさだから。
鮮魚店も今は調理しやすいように、包丁処理してくれる。
「シマアジにしようかしら、それともブリ?」そんな具合で。
ヤリイカだって美味しそう。
魚介類も下処理さえしてあれば、調理なんてすぐだもの。
生物、煮る、焼く、炒める、揚げる。どうしたら、美味しいかしら。
だから調理法も調味も、自炊ではとてもシンプル。
でも私、調理師の資格ぐらい、ずーっとずーっと前に取って、持ってるもーん。
外食に比べたら、例えば千円也の価格で、どれ程の食材を購入できるか、
今更ながらに考えてしまう。
しかも良質なものを、たっぷりと。
当たり前、あたりまえ過ぎるけど。
でもね、冷蔵庫の中が溢れる。
買い置きで溢れるのではなくて、いっぺんに食べられないから。
卵1パックだって、何日かかかっちゃうもの。
豚でも飼おうかしら。
これを私の胃袋に放り込んだとしたら、いったいどうなっちゃう?
ポニョポニョ、ポニョニョ~ン。
脳ミソの総支配人にまた叱られる。
「アンタ、外食だけに、したらッ。その方が食いたい時に食うって、なくなるよ。」
そんなんで、私は出来立てのお料理を、お口をあんぐりと開けて、放り込む。
お口の中いっぱいに、広がれと言わんばかりに。
「美味しい、美味しい」
この世に生きている歓びの、大事な一つよ。
だから私、よく食べるひと、美味しそうに食べる男のひとは好き。
一人、食卓で美味しそうに食べている、自分も好き。
負け惜しみかしら。
いいもん、いいもん。
そんなこんなで、へんなおんなアンナ。
ショップのウインドーに飾ってある、お料理サンプルよりも。
ストアーの食材に興味が惹かれるってワケ。
そんな買物の時に、服装格好なんて気にする人などいない。
たまには、網タイツの格好でも。
「普通の女の人は昼間っから、そんな格好で歩かないわよ。」
女友達の親身なアドバイス。ありがたいわ。
でも、「なに言ってんの。私はおかまよ。」