私の知人女性Aさん。

彼女がまだ歩き始めてすぐの頃に、お父様が亡くなられたそう。

兄妹はいらっしゃいません。

その後、お母様は再婚することはなく、女手一つで育ててもらったのだそうです。

 

Aさんのご家族はとっても仲良しで、いつも家族で集まって楽しく過ごしています。

数年前に高齢となったお母様は施設に入られたそうですが、それまでは2世帯住宅でお母様も同じところに住んでいらっしゃったので、お母様ともとても仲が良いのだと思っていました。

 

でも…

「どうにも母のことを好きになれない」とお話されていて私はビックリしました。

 

血の繋がっている家族であっても、どうにもウマが合わない、好きになれないことがあるのは、もうそれは仕方がないし、

「そんなこと、あるよね〜」と私は思っていたけれど、ものすごく優しくて人情味溢れるAさんの口から出たのでビックリでした。

 

Aさんがお母様を好きになれないエピソードの中で、彼女にとって最たるものを話してくださいました。

 

Aさんが二人目のお子さんを出産される時。

お子さんは無事に産まれたのだけれど、Aさんご本人は大量出血で意識不明状態となり、Aさんのご家族は医師から助からないかもしれないと告げられたのだそうです。

その時に居合わせたお母様は半狂乱になりながら「あの子が死んじゃったら、私のこの先の人生はどうなるんだ!?」と叫んでいたそうです。

 

お母様はずっと、Aさんの心配ではなく、ご自身の将来を心配されていたそうです。

一緒にいたAさんのご主人様はドン引き…

 

 

その後Aさんは何の後遺症も無く無事に回復されましたが、後日お母様の言動が耳に入り、深い心の傷を負ったそうです。

 

 

・・・・・・・

 

話は変わり、私の知人女性Bさんのお話。

 

Bさんの娘さんがご結婚された話は風の便りで聞いていたのですが、久しぶりに会うことがあってお話をしていたら、娘さんは出産の時に大出血を起こして心肺停止状態になってしまったそうです。

お腹の中にいた赤ちゃんも危険な状態で、出産した病院から娘さんと赤ちゃんはそれぞれ別々の緊急対応できる病院へと救急搬送されたそうです。

 

娘さんは出血が全然止まらなくて大量の輸血を受けたそうですが、すべての血が入れ代わったと思われる程の輸血量だったそうです。

 

今では母子共に元気にしているそうですが、娘さんもお孫ちゃんも、医療機関での経過観察がまだ続くのだと言っていました。

 

 

 

Bさんからこのお話を聞いた時に、ふとAさんの話を思い出して、BさんにAさんのお母様の話をしてみました。

 

Bさんはとても優しい人だし、「母親がB さんだから、娘さんがAさんみたいにトラウマになることは無いですね〜」という気持ちで私は話してみたのですが…

 

「私、その気持ちわかる。 娘が死ぬかもしれないって言われた時に、私のこれからの人生設計を見直さなくちゃいけなくなるかもって頭をよぎったから」とBさんに言われました。

 

 

私は、Aさんのお母様をディスるかのような話し方をしてしまったので、動揺しました。

二の句を継ぐと、Bさんをディスることにもなりかねなくて…

 

私にとってまさかのBさんからの返答に、うまく答えられなかったように思います。

 

 

Bさんのように優しい人でも、有事の際には娘さんのことよりも保身に走る考えが湧いてしまうのだな、と正直驚きました。

でもそれは人間なのだから仕方がない。

もしかしたら、それこそが人間なのかもしれない。

 

そして、自分が酷い人だと思われるかもしれない場面で、自分が思ったことを素直に話せるBさんは凄いな、と思いました。

 

 

 

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今度いつAさんと会えるかはわからないけれど。

 

もしAさんにBさんの話をしたら、少しは心が安らぐだろうか?

 

どんなに優しいBさんでも、いざとなると自分の身可愛さに、娘さんのことも置き去りになった…と。

それが人間なのかもしれない、と。