私は結婚してしばらくは、妊娠・出産を希望していなかった。

 

理由はいくつかあって、仕事の技能をしっかりと身に付けたかったことや、

結婚後すぐに夫婦揃ってへき地で働くことになって、私が妊娠して仕事から離脱すると周囲に多大な迷惑をかけてしまうこと

などがあった。

1年半経てば東京に戻ることも決まっていたし、東京に戻ってもまだ20代のうちだから、子供を授かることに対して焦ってもいなかったのだ。

 

へき地での勤務も無事に終了し、夫婦揃って東京に戻ってきて、東京での二人の生活が慣れてきた頃。

そろそろ子供が授かれたらいいかなー、なんて思い始めた。

 

なんとなく簡単に考えていたので、数か月で授かれるものと思い込んでいた私。

…だったのだが。

 

3か月くらい経っても妊娠の兆候がない。

すごーーーーーーく落ち込んだ。

 

正直に告白すると、私は本当の本当に子供が欲しかったと言うよりは、

夫が欲しいと言っていたから、ということと、

当時の社会が子供はいて当然的だったので、社会から子供はいるべきと思い込まされていたこと、

仕事が私にとってとてつもなく重責で、仕事を一時的に休む口実が欲しかったこと、

とかから子供が欲しかったのだと思う。

 

そして、子供ができたら夫が変わってくれるのではないかという淡い、いや強い期待をしてしまったからというのも大きい。

 

夫は大のお酒好きで、結婚前からだいぶ困らされていた。

泥酔して急性アルコール中毒をおこすこともしょっちゅうだったし。

結婚したら変わってくれるかと思っていたけれど、結婚後も飲み歩いてまともな時間に家に帰ってこなかったのだ。

 

しらふだったとして、夫は有言実行ならぬ有言不実行で、夫に期待しては裏切られることが多かった。

 

 

変わってくれないくらいなら、離婚するしかないのか?とか思っていたある日。

東京に戻ってから、やっと半年経ったかなー?なある日。

 

夫の白血病が発覚。

 

 

「もう、離婚してやるー! むきーーー!!!」

ってなっていた私が、一転、夫の闘病生活を全力で支えることになったのだ。

 

そして、抗がん剤治療がすぐに始まり、子供がどうのとか言っている事態ではなくなってしまった

…はずだった。

 

 

 

つづく

 

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後々、夫に「なんで結婚してすぐ、飲み歩いて家に帰ってこなくなっちゃったの?」と聞いたことがあります。

 

すると、

「どんなに一緒にいたくてもいつかはお別れの日が来るでしょ? そう思うと悲しくて一緒にいられなかった」と真顔で言われました。

 

私は理解できずに、何度も聞き返しましたが、返ってくる答えは変わらず。

そして、嘘を言っているとはどうにも思えない夫の仕草。

 

終いには、「君にはわかってもらえないよ!」と背を向けられました。

 

 

夫よ。

そう思うのなら、最初からちゃんと一緒にいればよかったのではないの?

そんなに早くお星様になっちゃうのなら、なおのこと。