泉山氏の Cry の翻訳についての記事で、いくつか質問があった。大切なことばかりだと思うので、ここで詳しく御説明したい。

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英語がまったく解らない人にとって目にした和訳者の解釈が絶対になってしまいます、どれを信じたら良いんでしょうか?永遠にマイケルの本心での和訳を私達は知ることは出来ないのですか?先生が訳していただけると嬉しいのですが・・・いかがでしょうか?
お時間がありましたら よろしくお願いいたします
自分の生まれが英語圏だったらと こういうことに出くわすと いつも思います

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マイケルの作品を理解するのに、英語力が不可欠かというと、そういう必要はない。何より大切なことは、彼の作品を全力で感じることだ。マイケルの目的はおそらく、理解されることにあるのではなく、それを聴く人の人生をより豊かな、生きるに値するものにすることにある、と私は思う。それは、このブログで延々と論じて来たことから、立証されるであろう。

彼はむしろ「誤解」されることを望んでさえいた。そうやって、彼の届けようとしたメッセージを拒否するような人にさえ、自分のメッセージを伝えようとしたのだ。意識の防御をかい潜ってまで、聴く者の魂に届けようとする、壮絶なパフォーマンスを、マイケルは人生を掛けて展開した。

この目的からすれば、英語で書かれた歌詞を聞いてすぐ「わかった」つもりになる人は、彼の仕掛けた「罠」に掛かって誤解しやすいはずだ。言葉に騙されるのである。

英語圏の人で、私のようにマイケルを読み解いている人は、いないのではないかと思う。なぜなら、私の解釈は、聴いただけでは<意味がわからない>ことによって、はじめて可能になっているからである。英語を聴いてわかったつもりになってしまう英語圏の人は、ここまで考えられない可能性がある。

私の英語力では、曲を聴いているだけでは、意味がサッパリわからないので、音楽全体を感じることに全力を集中する。そこから感じとったことが私の解釈の主柱である。歌詞はそれから読むのだが、ちょっと読んだってサッパリわからない。他の曲とか、マイケルの発言とかを考慮に入れないと、解釈の手がかりがつかめない。

そういうことを考えてから、また音を聞き、歌詞を見て、ということを繰りかえし、考え抜いて漸く、マイケルが伝えようとしたメッセージが見えてくる。そうしてはじめて、英文の一語一語の意味が浮び上がってくる。そうやって浮び上がった意味を、日本語でどうやって表現するかを考えて、訳文を作っている。

こんなメンドクサイことを、英語ネイティブの人が、やる気になるだろうか? 

また、私の訳文は、私が受けとめたマイケルの曲の解釈を、日本語で表現したものに過ぎない。それゆえ、私のマイケルであって、読者のマイケルではない。それぞれの人の経験や感情や体調などを含む人生と、マイケルの作品との真摯な出会いにこそ意味があるのであって、私のブログや訳詞はそのための手掛かりを提供するに過ぎない。

大切なことは、作品を真摯に受けとめることである。英語がわかるかどうか、歌詞がわかるかということは、二の次である。

(つづく)
大西恒樹訳は、泉谷訳に比べて、はるかにマトモである。しかし、

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この曲は、そのタイトルにもなっている「Cry」をどう訳すかで印象は全く変って来ます。皆さん、「cry=泣く」と思っていらっしゃるかもしれませんが、英語の「cry」は日本語の「泣く」とはイコールではありません。むしろ日本語では「泣く」としか表現しないことを、英語では「shed tears(涙を流す)」「weep(むせび泣く)」「cry(声を出して泣く)」などというように、泣き方によって複数の表現があります。「cry」は同じ泣き方でも、声を出す場合に使われ、むしろ、全く泣いていなくても「叫ぶ」「大声を上げる」「動物が鳴く」という意味でも使われます。したがって、ここの訳を「泣く」という日本語にするか、「叫ぶ」にするかで印象が変ります。私は全体の内容からして、「泣く」という情緒的な日本語を使うより、「叫ぶ」「声を上げる」という言葉を使った方が適切と判断しました。
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という判断は無理である。なぜなら既に指摘したように、Cry のシングルCDのジャケットに、涙を流すマイケルの目が描かれているからである。ここを見誤ったために、「人々は悲しい時に笑っている」という感情の抑圧が問題であって、それゆえ悲しいときには声を上げて泣け、というマイケルのメッセージが消えてしまっている。「叫ぶ」と解釈するので、

All cry at same time tonight
みんなで今夜、同時に叫ぶんだ!

という訳になってしまっている。これでは

決起集会

である。このような発想は、 "Make a little space" というマイケルの変革戦略とは相容れない。

And will the sun ever shine
In the blind man's eyes when he cries?
目の見えない人が助けを求めて叫ぶ時、
彼の目に光は射すのか?

と訳しているが、「助けを求めて叫ぶ」という解釈はいくらなんでもおかしい。cry を「叫ぶ」と訳す無理が現れている。これは、視覚障害者が駅で難渋している場面ではない。真実が見えなくなった者が、自らの痛みに直面し、涙を流すことで、心の蓋が外れ、真実が見えるようになる、という話である。

これは新約聖書の次の「目から鱗が落ちる」ということわざの元となった箇所を下敷きにしている。キリスト教徒を迫害していたサウロが、イエスの光に打たれて改心し、伝道者パウロとなる場面である。そもそも cry という曲全体が、この箇所を踏まえているように私は思う。

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使徒言行録 / 9章 3節~19節 (新共同訳)

ところが、サウロが旅をしてダマスコに近づいたとき、突然、天からの光が彼の周りを照らした。サウロは地に倒れ、「サウル、サウル、なぜ、わたしを迫害するのか」と呼びかける声を聞いた。「主よ、あなたはどなたですか」と言うと、答えがあった。「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。起きて町に入れ。そうすれば、あなたのなすべきことが知らされる。」同行していた人たちは、声は聞こえても、だれの姿も見えないので、ものも言えず立っていた。サウロは地面から起き上がって、目を開けたが、何も見えなかった。人々は彼の手を引いてダマスコに連れて行った。サウロは三日間、目が見えず、食べも飲みもしなかった。

ところで、ダマスコにアナニアという弟子がいた。幻の中で主が、「アナニア」と呼びかけると、アナニアは、「主よ、ここにおります」と言った。すると、主は言われた。「立って、『直線通り』と呼ばれる通りへ行き、ユダの家にいるサウロという名の、タルソス出身の者を訪ねよ。今、彼は祈っている。アナニアという人が入って来て自分の上に手を置き、元どおり目が見えるようにしてくれるのを、幻で見たのだ。」

しかし、アナニアは答えた。「主よ、わたしは、その人がエルサレムで、あなたの聖なる者たちに対してどんな悪事を働いたか、大勢の人から聞きました。ここでも、御名を呼び求める人をすべて捕らえるため、祭司長たちから権限を受けています。」すると、主は言われた。「行け。あの者は、異邦人や王たち、またイスラエルの子らにわたしの名を伝えるために、わたしが選んだ器である。わたしの名のためにどんなに苦しまなくてはならないかを、わたしは彼に示そう。」

そこで、アナニアは出かけて行ってユダの家に入り、サウロの上に手を置いて言った。「兄弟サウル、あなたがここへ来る途中に現れてくださった主イエスは、あなたが元どおり目が見えるようになり、また、聖霊で満たされるようにと、わたしをお遣わしになったのです。」すると、たちまち目からうろこのようなものが落ち、サウロは元どおり見えるようになった。そこで、身を起こして洗礼を受け、食事をして元気を取り戻した。
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これ以外に、以下が気になる。

★大西氏も hold on を合いの手ではなく、地の文として訳している。

★ (I'm gonna need some kind of sign) という部分に、「注2:それがそのサインだ、ということを言外に表現しているのでしょう。」と注をつけているが、sign というのは聖書の「奇跡のしるし」という意味であることを見落としている。



========ここから大西訳========
Cry
written by R. Kelly

Somebody shakes when the wind blows
Somebody's missing a friend, hold on
Somebody's lacking a hero
And they have not a clue when it's all gonna end

風に吹かれ、寒さに震える人がいる。
友達もいない人がいるんだ。でも負けないで。(注1)
助けてくれるヒーローがいない人もいる。
そんなことがいつまで続くか、彼らにはまるで先が見えない。

注1:「hold on」は基本的に「そのまま」という意味です。ですから、「(そのまま)待って」という意味や、「(そのまま)持ちこたえて」という使われ方をします。ですから、ここでは後者のニュアンスを少し意訳して、「頑張って、負けないで」としています。

Stories buried and untold
Someone is hiding the truth, hold on
When will this mystery unfold
And will the sun ever shine
In the blind man's eyes when he cries?

大事な事実が語られずに葬られる。
誰かが真実を隠しているんだ。でも負けないで。
いつになったら、この不思議が解消されるんだ?
目の見えない人が助けを求めて叫ぶ時、
彼の目に光は射すのか?


You can change the world
(I can't do it by myself)
You can touch the sky
(Gonna take somebody's help)
You're the chosen one
(I'm gonna need some kind of sign)
If we all cry at the same time tonight

僕らは世界を変えられる。
(僕一人じゃできないよ)
僕らは空にだって手が届く。
(誰かの助けが必要だ)
君らは選ばれし者たちだ。
(僕にそれを示してくれ)
もし今夜、僕らみんなが同時に叫べば、、(注2)

注2:それがそのサインだ、ということを言外に表現しているのでしょう。


People laugh when they're feelin' sad
Someone is taking a life, hold on
Respect to believe in your dreams
Tell me where were you
When your children cried last night?

人々は悲しい時に笑っている。
人の命を奪う誰かがいる。でも負けないで。
自分の夢を信じることを大事にするんだ。
教えてくれ、あなたはどこにいた?
昨日の夜、あなたの子ども達が泣いていた時。


Faces fill with madness
Miracles unheard of, hold on
Faith is found in the winds
All we have to do is reach for the truth

狂気に満ちた顔の数々。
奇跡など聞いたこともない。でも負けないで。
信じるものは、風の中に見つかる。
ただ、僕らが真実に手を伸ばしさえすれば。


You can change the world
(I can't do it by myself)
You can touch the sky
(It's gonna take somebody's help)
You're the chosen one
(I'm gonna need some kind of sign)
If we all cry at the same time tonight

僕らは世界を変えられる。
(僕一人じゃできないよ)
僕らは空にだって手が届く。
(誰かの助けが必要だ)
君らは選ばれし者たちだ。
(僕にそれを示してくれ)
もし今夜、僕らみんなが同時に叫べば、、


And when that flag blows
There'll be no more wars
And when all calls
I will answer all your prayers, prayers
Show the world

そしてその旗が風にはためく時、
戦争はなくなるだろう。
そしてみんなが声を上げれば
僕はその全ての祈り、祈りに応えるだろう。
世界に示そう。


You can change the world
(I can't do it by myself)
You can touch the sky
(Gonna take somebody's help)
You're the chosen one
(I'm gonna need some kind of sign)
All cry at same time tonight

僕らは世界を変えられる。
(僕一人じゃできないよ)
僕らは空にだって手が届く。
(誰かの助けが必要だ)
君らは選ばれし者たちだ。
(僕にそれを示してくれ)
みんなで今夜、同時に叫ぶんだ。


You can change the world
(I can't do it by myself)
You can touch the sky
(Gonna take somebody's help)
You're the chosen one
(I'm gonna need some kind of sign)
All cry at same time tonight

僕らは世界を変えられる。
(僕一人じゃできないよ)
僕らは空にだって手が届く。
(誰かの助けが必要だ)
君らは選ばれし者たちだ。
(僕にそれを示してくれ)
みんなで今夜、同時に叫ぶんだ。


You can change the world
(I can't do it by myself)
You can touch the sky
(Gonna take somebody's help)
You're the chosen one
(I'm gonna need some kind of sign)
All cry at same time tonight

All cry at same time tonight
All cry at same time tonight
Change the world

僕らは世界を変えられる。
(僕一人じゃできないよ)
僕らは空にだって手が届く。
(誰かの助けが必要だ)
君らは選ばれし者たちだ。
(僕にそれを示してくれ)
みんなで今夜、同時に叫ぶんだ。

みんなで今夜、同時に叫ぶんだ。
みんなで今夜、同時に叫ぶんだ。
世界を変えよう。

(訳:大西恒樹)
People laugh when they're feelin sad
悲しい時でも、人々は顔で笑って心で泣いてるんだ
既に述べたように、「顔で笑って心で泣いて」と訳すと、寅さんか軍歌になる。
★they are feeling sad は「悲しい」と多少ニュアンスが違う。

Someone is taking a life, hold on
自ら命を絶とうとしている人よ、どうか思いとどまってくれ
★take a life は「ある生命を奪う」であって、別に自殺とは限らない。
★なんども言うように、hold on は合いの手で、「どうか思いとどまってくれ」ではない。

Respect to believe in your dreams
自分の夢を信じるという気持ちを、どうか大切にしてほしい
★「気持ち」に相当する単語はない。

Tell me where were you
when your children cried last night?
夕べ、キミの子ども達が泣いていたとき
キミはどこでどうしていたんだい?
★なぜ突然「キミ」とカタカナに?
★「どうしていた」に相当する単語はない。

Faces fill with madness
人々の顔を見れば、その表情は困惑に満ちているよ
★「見れば」に相当する単語はない。
★「表情」に相当する単語はない。
★madness は「狂気」であって、「困惑」ではない。

Miracles unheard of, hold on
奇跡なんて起こるはずもないと言いたげだね でもちょっと待って
★unheard of を「なんて起こるはずもないと言いたげ」と訳すことはできない。
★hold on は合いの手で、「でもちょっと待って」ではな。

Faith is found in the winds
信念は、今ここを通りすぎて行く風の中に隠されているのさ
★is found は「見出される」であって、「隠されているのさ」ではない。
★「今ここを通りすぎて行く」に相当する単語はない。

All we have to do
Is reach for the truth
だから僕らは、
真実を探求しなくちゃいけないんだ
★「だから」に相当する接続詞はない。
★All we have to do の意味は、「我々がなすべきことは~~だけだ」であって、この「だけ」という意味が訳されていない。
★reach は「到達」であって「探求」ではない。

And when that flag blows
平和の旗が風にひるがえるとき
★「平和の」に相当する単語はない。
★ that が訳されていない。

There'll be no more wars
この世に戦争はなくなるんだ
★「この世に」に相当する単語はない。
★ no more が訳されていない

And when all calls
世界中の人々が僕に向かって声を発してくれたなら
★ all は「世界中の人々」ではない。
★「僕に向かって」に相当する言葉はない。
★「くれた」に相当する単語はない。

僕はみんなの願いを聞き届けてあげよう
I will answer all your prayers
★ answer は「応える」であって「聞き届ける」ではない。
★ prayers は「願い」ではなく「祈り」「祈祷」。

Change the world
この世を僕らみんなの力で変えよう
★「僕らみんなの力」に相当する単語はない。


以上のように、合格は1行だけである。全体に、とんでもない訳であって、こんなインチキな翻訳をジャケットにのせて流布させた泉山氏とソニーとの責任は重い。Visons でもソニーはこのまま使っているが、言語道断である。

(了)
People laugh when they're feelin sad
悲しい時でも、人々は顔で笑って心で泣いてるんだ

★この部分が泉山訳のクライマックスである。
泉山氏はマイケル・ジャクソンを寅さんと一緒にしている。「男はつらいよ」の以下の Youtube の2:25 のところから「男というもの、つらいもの、顔で笑って、顔で笑って、腹で泣く、腹で泣く。」という星野哲郎の歌詞があるので参考にしていただきたい。



調べてみたら、「顔で笑って、心で泣いて」という名台詞は、主題歌ではなく、第2作『続・男はつらいよ』で

バカヤロー。顔で笑って、心で泣いてんのよ。
それが渡世人のツレエところよ。


という形で出てくるのだが、原典は以下の軍歌であるらしい。次の映像の 1:20 のところで出てくる。マイケル・ジャクソンを海軍兵学校の軍歌に訳すのは、奇想天外である。



(つづく)
Visons に出ている Cry の訳詞を見たら、泉山真奈美という人の訳したものが出ていた。Invincible の日本語版に出ているものも同じらしい。この人は訳詞家、黒人音楽ライターなどとして何冊か本を出しており、スラングの辞書も出している。アメリカ語の「知識」は私の数段上、と見てよかろう。

しかし、その翻訳たるや、マイケル思想を全く理解していないことが露呈しているばかりか、アメリカ語の理解としても完全に落第である。翻訳は言葉についての「知識」だけでできるものではないことを示す好例だと思うので、詳しく検討しておきたい。文章の内容を理解して意味を把握する気がないなら、言葉の知識は無用の長物なのである。特に受験生はよ~っく覚えておくように。英語や古文や漢文の勉強は、単語を詰め込んでもダメなのである。

★が私のコメントである。
全体として「誤訳」を通り越して「冒涜」と言って良いほど、無茶苦茶な訳である。訳者は、「直訳ではなく訳詞なのだから、ゲージュツ的に自由に訳しているのだ」と言うかもしれないが、だとすると、出来上がった日本語訳は意味が全くズレている上に、「詩」と呼ぶことは決して出来ない、最低ランクのおセンチな下らないものになっているのが問題である。

はっきり言ってこれではマイケル・ジャクソンの歌ではなく、

「ど演歌」か「アンジェラ・アキ」

である。まぁ、一行一行見ていこう。あまりにひどいので、広く知らせる必要があると考えるので、一般公開にする。知り合いにマイケル・ファンがおられたら、見るようにお伝えいただきたい。

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Somebody shakes when the wind blows
一陣の風が吹いた瞬間に、誰かが震えているよ
★when を「瞬間に」と訳すのは意味がズレている。

Somebody's missing a friend, hold on
この瞬間に友達と死に別れた人がいるかもしれない
★ is missing を「死に別れた」とは完了に訳してはいけはい。
★「かもしれない」に相当する助動詞、副詞はない。

hold on
そんな時は、しっかりしなくちゃダメだよ
★hold on は歌の「合いの手」であって聴いていいる人に向けられているのであり、「友人と死に別れた人」に対する呼びかけではない。

Somebody's lacking a hero
憧れの対象になるようなヒーローが周りにいなくて
★「憧れの対象になるような」という形容句はない。
★「周りに」という副詞もない。

And they have not a clue
問題の解決の糸口さえ見つけられない人もいるのさ
★「さえ」に相当する副詞はない。
★「いるのさ」に相当する助動詞はない。

When it's all gonna end
いつになったら、そんな世の中が終わるんだろう?
★「世の中」に相当する名詞はない。
★when 以下は疑問文ではなく、前の行の続きで、when は疑問詞ではなく接続詞。

Stories buried and untold
本当に知りたいことは、いつも闇に葬られて僕らの耳には届かない
★stories を勝手に「本当に知りたいこと」と訳す根拠はない。
★「闇に~僕らの耳には届かない」に相当する語句はない。

Someone is hiding the truth,
きっと誰かが真実を隠しているのさ
★「きっと」「のさ」に対応する語句はない。

hold on
そんな時は、毅然としてなくちゃダメだよ
★hold on は合いの手。

When will this mystery unfold
この世に溢れる摩訶不思議なことが
いつになったら明かされるんだろう?
★ this mystery は、「指示代名詞の形容詞用法+単数名詞」であるから「この謎」であって、「この世に溢れる摩訶不思議なこと」と漠然とした多数に訳してはいけない。

And will the sun ever shine
In the blind man's eyes when he cries?
光を失った人が涙を流す時
その頭上にも太陽が降り注ぐんだろうか?
★shine in the .... eyes は「頭上」ではなく「目の中」あるいは「目に」。
★shine は「輝く」であって、「降り注ぐ」ではない。

You can change the world
(I can't do it by myself)
そんな世の中を変えることができるんだ
(僕だけの力じゃ無理だよ)
★ I を「僕」と訳すなら、you を訳すべき。この対比は重要。

You can touch the sky
(Gonna take somebody's help)
あの大空にだって手が届くのさ
(誰かの助けが必要なんだ)
★この行だけは合格。

君だって、神様に選ばれし人間なのさ
(だったらその証が欲しいよ)
You're the chosen one
(I'm gonna need some kind of sign)
★「だって」に相当する語句はない。「君は」が正しい。
★ you を「君」と訳すなら、I も訳さねばならない。この対比は重要。
★「だったら」に相当する接続詞がない。
★ some kind of を訳していない。

今夜、僕ら人間がいっせいに泣いたなら、この世は変わるのかな?
If we all cry at the same time tonight
★we を「僕ら人間」と勝手に「人間」をつけてはいけない。
★「この世は変わるのかな?」というおセンチな節を勝手につけてはいけない。

(つづく)
何度も登場していただいている☆まみ☆さんが、一昨日のブログを読んでいきなり絵を描いてくださった。Invincible のジャッケトからとったものであるが、なんと

で、感動しまして、ほぼ2時間弱で描きあげてしまいました!

とのことである。こんなものを二時間で描くなんて。。。

それで、

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そして、「Cry」の歌詞の解説で、またしても、感動です!

たとえ、傷ついて自分の魂を隠して生きてきたとしても、寄り添って事実と向き合う勇気をくれる人に出会い、共に涙を流してくれるなら、必ず魂の回復へとむかえるということを歌い上げているんですね。(私の言葉に言い換えてしまっています。詳しくは、ぜひ安冨さんのブログを、ご覧になってください。私のアメンバーからいけます。)

まさにそういうことも、アリス・ミラーは書いていて、救いがありました。
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という指摘をなさっている。「なるほど~、私はそんなことを書いていたのか~」という感じである。私も薄々そういうことに気づきながら書いてはいたのだが、このように言語化できてはいなかった。

これはどういうことかというと、アリス・ミラーの『闇からの目覚め』によれば、人が虐待によって魂を凍らせてしまったとしても、「助けてくれる証人」と「事情をわきまえた証人」と出会うことができれば、自分の姿と出会うことができる、といっている。

「助けてくれる証人」とは、子どもが虐待を受けている現場で助けてくれる人である。それは誰でも良いのだが、いずれにせよ本物の「愛」をわずかであっても与えてくれる人が、「助けてくれる証人」である。子どもが「愛と称するもの」のみを与えられて育つと、「愛」がどういうものかわからなくなってしまう。完全にそういうものから排除されて育ってしまうと、「愛」を憎悪し、「愛と称するもの」に引き寄せられる危険で破壊的な人間になる。

しかし、「助けてくれる証人」がいれば、いずれ、大人になってからでも、自分が親から与えられた「愛と称するもの」が「愛」ではないことに気づくことが可能である。可能ではあるが、自分ひとりでそれと向き合う勇気を持つことはできない。親が与えてくれた「愛」が「愛と称するもの」に過ぎないことを認めるほど、恐しいことはないからである。そのときに「事情をわきまえた証人」と出会う必要がある。それは、そのような状況で育つことの痛みと悲しみとを理解して、受けいれてくれる人のことである。

この二種類の証人と出会うことで、人は自分自身の姿と出会い、魂に覆い被さる蓋を取り除くことができる。これがアリス・ミラーがその晩年に到達した真理である。

まさしく、 Cry はこの真理を歌っているのであった!!

それから、You Rock My World に関する考察を拝見して、ようやくこの曲の意味がわかった。この曲の ショートフィルムが、ものすごいお金がかかっているのに、サッパリ意味がわからないと思っていたのだが、あれは、

「もしも本当に運命の人と出会ったら、マフィアの根城に乗り込んででも連れてこい!!」

という強烈にして単純なメッセージだったのである。そしたら、マーロン・ブラントのようなマフィアの親分でも、わかってくれるのだ、ということだった。そう思うと、非常に筋の通ったPVである。

この観点から、そのうち You Rock My World を論じさせていただきたいと思う。
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You're the chosen one (I'm gonna need some kind of sign)
If we all cry at the same time tonight
あなたは選ばれし者。(私は何らかの印を必要とする。)
もし今夜、我々が同時に涙を流すなら。
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このような奇跡に出会っていない「普通の人」は、自らの姿に直面するのを避けるために、自分の感覚を感じ取らないように努めている。それゆえ、そういう人は悲しい時にこそ、笑って見せる。このゾッとするような作り笑いを浮かべるような人は、権力のある人に命令されたり、あるいは自分の利益に必要であれば、生命を奪うようなことを平気でする。そういう人は、自分自身の夢を信じることができない。そして自分の子供が泣き叫んでいても、聞こえないフリをすることができる。

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People laugh when they're feelin sad
Someone is taking a life, hold on
Respect to believe in your dreams
Tell me where were you
when your children cried last night?
人々は悲しみを感じている時に笑う。
誰かが命を奪っている。続けて!
あなたの夢を信じることを尊重せよ。
昨夜あなたの子供が泣いているとき、
あなたはどこにいたというのか?
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そういう「正常」な人は実際には「狂気」を生きている。「正常」な人には奇跡が見えない。

====================
Faces fill with madness
Miracles unheard of, hold on
人々の顔は狂気に満ちる。
奇跡は聴かれない。続けて!
====================

この「正常」な狂気の世界のなかで我々がなすべきことは、真実を受け止めることである。それは、命の息吹が引き起こす風の中にこそ見出される。

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Faith is found in the winds
All we have to do
Is reach for the truth
信仰はその風の中に見出される。
我々がせねばならぬことは、
真理に到達することだけだ。
====================

そしてこの命の風に吹かれて真理の旗が舞うとき、あなたの世界に諍いはなく、平和が訪れる。

====================
And when that flag blows
There'll be no more wars
そして旗が風に吹かれるとき、
もはや諍(いさか)いはない。
====================

このような安心立命の世界に到達するには、マイケルに"I love you!" と呼びかければ良いのである。そうすればマイケルは、"I love you, too!" あるいは "I love you, more!" と応答してくれる。身体という制約を離れ、地球規模の人格へと飛翔した彼は、いまや世界のどこにいる人にも応えることができる。

====================
And when all calls
I will answer all your prayers
そして皆が呼ぶとき、
私は、あなた方すべての祈りに応えるだろう。 
====================

Cry 泣け!
悲しい時に笑ってはいけない、泣け!
勇気ある人に縋って泣き叫ぶのだ!
そうすればあなたは、自らの姿に直面することができる。
その瞬間、あなたの世界は一変する。

====================
Change the world
世界を変えよ。
====================

(つづく)
cry という自動詞には色々な意味がある。e-プログレッシブ英和中辞典には次のように出ている。

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[動](cried, ~・ing)(自)[I([副])]

1 〈人が〉(通例涙を流しながら)叫び声をあげる,叫ぶ,泣く,嘆く.
2 〈人が〉(…を求めて)(大声で)呼ぶ;叫ぶ,どなる,わめく((out/for ...))
3 〈鳥・獣が〉鳴く,鳴き叫ぶ;〈犬が〉ほえる.
4 〈ブリキなどが〉(曲げられて)音を立てる.
====================

このうちどれが当てはまるかを考えていて、最初は「叫ぶ」だろうと思っていた。理不尽や不正義を見たときに、黙っていないで声を上げろ、ということだと解釈していたのだ。しかし音楽を聞きながら、なんとなく、本当にそうだろうか、という違和感を感じていた。それで今回、歌詞をじっくり見て、「叫ぶ」ではなく「泣く」だと確信した。この曲は、世界を変えるために泣け、と言っているのだ。そもそもシングルCDのジャケットが泣いてる絵なのだから、「泣く」に決まっている。

$マイケル・ジャクソンの思想(と私が解釈するもの)著者:安冨歩

この曲は、

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Somebody shakes when the wind blows
あの風が吹くと、誰かが震える。
==============

という歌詞で始まる。最初に考えねばならないのは、「the wind 風」とは何かである。"a" ではなく "the" が付いているということは、何か特定の風をイメージしているのである。この単語はもう一度でて来る。それは、

==============
Faith is found in the winds
信仰はあの風の中に見出される。
==============

という箇所だ。ここでも "the" がついているから、同じ「あの」風である。「あの風」とは信仰が見出される場所なのである。マイケルの信仰とは何か。それはキリスト教的な人格的絶対神に対するものではなく、自らの魂・自らの生きる力への信仰である。

この最初の一行の表面的な意味は、

着るものがなく、飢えている人が世の中にはいて、彼らは風が吹くと寒くて震える、

というものである。しかし風が「自らの生きる力に対する信仰が見出される場所」であるなら、この解釈は退けられる。この場合の風は、魂のが起こす生きるための風である。そういう風に吹かれると、いわゆる魂の死んだ人は、恐れをなす。なぜなら、生きるための力を信じ、そこから息吹を吹き出させる人を見ることは、魂の死んでいるゾンビには恐怖だからである。それゆえ、この行は、

生命の風が吹くとゾンビは震える

という意味になる。なお、後半の"the winds"が複数になっているのは、最初の連が単数の "somebody"に関するものであるのに対して、後半の方は複数の "faces" に関するものだからであろう。

さて、そういうゾンビには、真の友だちがいない。「友達付き合い」があるだけである。それゆえ、

=================
Somebody's missing a friend,
誰か、友だちのいない者がいる。
=================

ということになる。しかもその状態はいつまで続くか見当がつかない。

こういう状態の人は、「自分には本当の友だちがいない」という真実に目を向けることが出来ない。次の連はそのことを歌っている。

=================
Stories buried and untold
Someone is hiding the truth, hold on
When will this mystery unfold
話されず、葬られる話。
誰かが真実を隠蔽している。やめないで!
この謎はいつ解明されるのか。
=================

自分自身の真実の姿を見ないために、目を覆い、盲た者となる。こういう人にとって、世界は偽りからできている。この偽りの世界から抜け出すには、どうすれば良いのか。それには目を開ければ良いのである。そうして自らの真実の姿に直面して、悲しみの涙を流す必要がある。そしてそれは同時に、本当の世界に触れた悦びの涙となる。しかし、その涙を流すには、勇気が必要であり、そこに踏み出すことができるかどうか、甚だ難しい。

なお、Hold on! というのはマイケルが良く入れる合いの手で「やめないで!」と訳しておいたが、ここでの意味は「目を背けないで!」というような意味だと思う。これは聴く者に向かっての発声であり、歌詞の地の文とは関係がない。

=================
And will the sun ever shine
In the blind man's eyes when he cries?
盲た者が涙を流すとき、
その者の目に太陽は果たして輝くのか。
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しかしもし、涙を流し、目を開くなら世界を変えることができる。本当の世界=天に出会うことができる。そのためには恐怖心を乗り越える勇気が必要であるが、それを一人で乗り越えることは不可能に近く、勇気ある人の助けが必要である。

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You can change the world (I can't do it by myself)
You can touch the sky (Gonna take somebody's help)
あなたは世界を変えることができる。(私一人ではできない。)
あなたは天に届くことができる。(誰かの助けがいる。)
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そうやって目を開いたなら、あなたはもはや「普通の人」ではない。「選ばれし者」である。選ばれし者は、奇跡を起こすことができる。その奇跡とは、他の人に寄り添い、魂を開いて、共に喜悦の涙を流す、ということである。「印 sign」というのは、聖書の概念で「 神力[神威]のしるし,お告げ,奇跡」というような意味である。

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You're the chosen one (I'm gonna need some kind of sign)
If we all cry at the same time tonight
あなたは選ばれし者。(私は何らかの印を必要とする。)
もし今夜、我々が同時に涙を流すなら。
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(つづく)
Cry

この曲はマイケルの集大成のようなものである。非常に深く、美しく、暖かい。Ben が彼の戦いの第一歩であるとすれば、Cry はその到達点を示している。実に偉大な作品である。

とりあえず歌詞を全訳しておこう。

CRY   泣け!

Somebody shakes when the wind blows
Somebody's missing a friend, hold on
Somebody's lacking a hero
And they have not a clue
When it's all gonna end

あの風が吹くと、誰かが震える。
誰か、友だちのいない者がいる。やめないで!
誰か、英雄がいなくて困っている。
そして彼らは、それがいつ終わるのか、
見当もつかない。

Stories buried and untold
Someone is hiding the truth, hold on
When will this mystery unfold
And will the sun ever shine
In the blind man's eyes when he cries?

話されず、葬られる話。
誰かが真実を隠蔽している。やめないで!
この謎はいつ解明されるのか。
盲た者が涙を流すとき、
その目に太陽は果たして輝くのか。

You can change the world (I can't do it by myself)
You can touch the sky (Gonna take somebody's help)
You're the chosen one (I'm gonna need some kind of sign)
If we all cry at the same time tonight

あなたは世界を変えることができる。(私一人ではできない。)
あなたは天に届くことができる。(誰かの助けがいる。)
あなたは選ばれし者。(私は何らかの印を必要とする。)
もし今夜、我々が同時に涙を流すなら。

People laugh when they're feelin sad
Someone is taking a life, hold on
Respect to believe in your dreams
Tell me where were you
when your children cried last night?

人々は悲しみを感じている時に笑う。
誰かが命を奪っている。続けて!
あなたの夢を信じることを尊重せよ。
昨夜あなたの子供が泣いているとき、
あなたはどこにいたというのか?

Faces fill with madness
Miracles unheard of, hold on
Faith is found in the winds
All we have to do
Is reach for the truth

人々の顔は狂気に満ちる。
奇跡は聴かれない。やめないで!
信仰はその風の中に見出される。
我々がせねばならぬことは、
真理に到達することだけだ。

And when that flag blows
There'll be no more wars
And when all calls
I will answer all your prayers

そして旗が風に吹かれるとき、
もはや諍(いさか)いはない。
そして皆が呼ぶとき、
私は、あなた方すべての祈りに応えるだろう。 

Change the world

世界を変えよ。

(つづく)