遺伝子治療(いでんしちりょう)とは、遺伝子の異常や欠損が原因で生じる病気や障害を治療するために、遺伝子そのものを修正・補完・置換する医療技術のことを指します。この技術は、遺伝子の異常を持つ細胞に対して正常な遺伝子を導入することで、病気を治療しようとするものです。

### 遺伝子治療の方法

1. **体外治療(エクソヴィボ治療)**:
- 患者の細胞を体外に取り出し、遺伝子を導入した後に再び体内に戻す方法です。
- 例:白血病などの治療に使われる。

2. **体内治療(インヴィボ治療)**:
- 患者の体内に直接、遺伝子を導入する方法です。
- 例:筋ジストロフィーなどの治療に使われる。

### 遺伝子導入の方法

- **ウイルスベクター**:ウイルスを改変して、遺伝子を運ぶキャリアとして使用します。レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスなどが使われます。
- **非ウイルスベクター**:リポソーム、プラスミドDNA、ナノ粒子などを利用します。

### 遺伝子治療の応用分野

- **遺伝性疾患**:筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、血友病など。
- **がん治療**:特定の遺伝子変異を持つがん細胞をターゲットにした治療。
- **感染症**:HIVなどのウイルス感染症に対する治療。

### 遺伝子治療の課題

- **安全性**:遺伝子の導入に伴う予期せぬ副作用や、免疫反応が問題となる場合があります。
- **効率性**:遺伝子導入の成功率や、導入した遺伝子の安定な発現が課題です。
- **倫理的問題**:特にヒト胚への遺伝子治療や、遺伝子改変の社会的・倫理的な影響について議論があります。

### 現在の状況と展望

遺伝子治療は急速に発展している分野で、近年では実用化されている治療法も増えています。CRISPR-Cas9などの新しいゲノム編集技術の登場により、さらに効果的で正確な遺伝子治療が期待されています。

遺伝子治療の未来には、大規模な臨床試験を通じてさらに多くの病気に対する治療法が確立される可能性があり、個別化医療(プレシジョン・メディシン)の一環として重要な役割を果たすと考えられています。