ネタバレあり
ベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』を観た流れで、こちらも観てみることに。
こちらは1986年の中国・香港合作映画。『ラストエンペラー』より低予算だし、映画の格式は劣るけれども、溥儀の最晩年・李淑賢の回想録を基に『ラストエンペラー』では描かれなかった正室婉容の末路とか、溥儀が庭師を務めた後の生活、再婚、紅衛兵の迫害、死去までを描いているので、『ラストエンペラー』を補完する上で観て良かった。
溥儀が歴代の皇帝の中で、唯一火葬された皇帝、皇帝=龍、すなわち火龍というのがタイトルの由来。
冒頭で、溥儀が来日し昭和天皇と東京駅のホームで会っている映像らしきものがちらりと流れる。
しかし、『ラストエンペラー』同様、この映画でも東京裁判のシーンは描かれなかった。
婉容の末路は溥儀の弟・溥傑の妻、嵯峨浩の記録よりは幾分マイルドだが、アヘン中毒の悲惨さが描かれていた。
また、婉容の子供は、溥儀の命令でボイラーに放り込んで殺害とwikiにはあったが、映画では、溥儀の知らないところで処分されていたかのように描かれていた。これはどちらが真実なのか。
また溥儀が腎臓がんに犯された際には、紅衛兵の攻撃を恐れ入院を拒否されたという経緯は省略されていた。
入院中の溥儀のもとに3番目の側室側、李玉琴が訪れて、実際彼を責めるやりとりがあったのかどうかは謎。
しかし、自らをビンタする溥儀の姿は哀れさに拍車をかける。
実際に、溥儀が家臣に対して暇つぶしに殴り合いをさせるなどの悪い面もきちんと描かれて、哀れなだけの皇帝ではないことはわかっているが、それでも、幼い頃より自分の意思とは関係なく皇帝として運命づけられ、その運命に翻弄された男のやるせなさを覚える。
この映画でも紫禁城のロケがあり、妻と見学する溥儀の姿が描かれている。かつての自分の城でありながら、もはや立ち入り禁止の場所に立ち入ることもできず、自分の部屋も外から眺めるだけで、自分が使った布団がそのままであることを妻に説明するシーンなどは、溥儀の心中複雑な思いが垣間見られるシーンとなっている。
何もできない溥儀に対する李淑賢の苛立ちもリアルだし、それでも、妻を癌と勘違いした溥儀のエピソードなど、夫婦愛が感じられて、そこに晩年の溥儀の救いを感じる。
私は文化大革命に関して殆ど無知なのだが、『ラストエンペラー』にしてもこの映画にしても、やはりちょっと異様で怖い印象を受ける。