話題になっていたので観たいと思いつつなかなか行く時間がなくて、やっと観られた。

ロングラン上映で良かった。

 

幕末の侍が現代にタイムスリップというシチュエーション自体は新鮮味があるわけではないが、とにかく主演の山口馬木也がすごく良かった。渋みもあって本物の侍っぽいというか、喜劇的なシーンも笑わせようと演じるのではなく、極めて大真面目に、いかにも昔の侍のリアクションと思える説得力ある演技で、映画の面白さは殆ど彼の演技にあったように思う。いやはやこんな逸材今までどこに隠れてたって感じでwikiを調べたら、結構昔から活躍されていた俳優さんだった。でも脇役が多いせいか、印象にあまりない。

とにかく今回は役によくはまっていたし、主演男優賞もんの演技で、今後ももっとメインとなって活躍してほしい俳優さんだ。

 

インディーズ映画とあって無名の俳優さんが多いが、でもそれがまたこの映画の良さになっている。

助監督役のヒロインを演じた沙倉ゆうのは、実際にこの映画の助監督も務め、どこか綾瀬はるかを思わせるヒロインを好演していた。

 

同じくインディーズ映画の『カメラを止めるな!』の再来とも言われているようだが、単純に喜劇としての面白さなら『カメラを止めるな!』の方が笑えたし、前半のつまらないB級ゾンビから、後半の面白さが加速していく様はカメ止めの方が吸引力があったと思う。

まあ、ことさら比べる必要もないと思うし、この映画はこの映画で十分面白いけどね。

 

音楽の使い方も良かった。こういう和風の音楽もテンションあがるね。

 

ネタバレ

前半、現代にやってきた侍がカルチャーショックを受けるあたりは割とあっさりめになっている。個人的にはもっとこのあたりを観たい気がしたのだが、主人公は割とすぐに現代を受け入れている感じ。後に出てくる風見恭一郎も順応力がやたら高い。

それでも、おにぎりを食べるシーンや、ケーキに感動するあたりのエピソードが良かった。ケーキを食べることで現代が良い時代になったと実感するあたりはちょっとジーンとくる。

テレビを観て驚くとか、このあたりのベタなエピソードをもうちょっと多く取り入れても良かったような気もする。

 

「剣心会」に入ってからは、地味に斬られ役としての楽屋ネタになるので、侍という設定の必然が感じにくい。

現代の殺陣と実際の侍の殺陣に対する違和感とか、逆に本物の侍から見た時代劇の誤りを正すエピソードなんかがあるといいなーと思った。

にしても、記憶喪失とはいえ、身元不明の男をよく雇ったなー。

 

主人公が会津藩の末路を知るくだりで、再び過去から来た侍という設定が生きてきて、真剣での打ち合いとなるクライマックスが盛り上がる。

しかし、未来の日本に来て、真っ先に知りたいのは自分の藩がどうなったかってことではないかと思うのだが、脚本を見るまで調べようともしなかったのかという驚き。

とにかく真剣での打ち合いの緊張感が見事で、良い殺陣が観られたという満足感はあった。

 

封建制度が崩壊する幕末と、時代劇が失われつつある現代がリンクするあたりの設定はよく出来ていて、自分も子供のころはたくさんの時代劇を観てきたが、今ではどんどん時代劇が消えつつあり、その衰退に憂いを感じていたので、その時代を必死に生きてきた侍の思いと、時代劇を消したくないという思いとが、なにげに胸に刺さってちょっと泣きそうになってしまった。

やっぱりこういった文化は残しておきたいというか、忘却したくないという思う。それでもいずれはすべてが消えていくのかなーと思うととても寂しい。

山口馬木也のような侍にぴたっとはまる俳優もどんどんいなくなっていくのかなーとか。

 

日本人は侍の格好がやっぱり良く似合うんよ。びしっと刀を持って構える姿も格好いいし。

だからできる限りこうした文化を後世に伝えていけるといいなーと思う。