室町時代に実在した近江猿楽日吉座の大夫、犬王の物語。

南北王朝時代の室町というあたりがここ近年日本の歴史に関心があるので興味深く、映像美術もとても良かった。

猿楽能を現代的なロックオペラ風に描くミュージカルシーンも面白い試みだが、やや長くて飽きる。

曲調はちょっとクイーンを思い出す感じ。途中、もろ『We will rock you』と同じリズムだったし。

少々癖もあるが、でも悪くない作品という感じ。

 

アヴちゃん森山未來の歌声も良かったし、柄本佑松重豊と違和感なく、全体に声がはまっていて良かった。

 

 

ネタバレ

 

父親の欲望の為に異形として生まれた犬王が世の無念を舞い踊ることで人間の体を取り戻す展開は手塚治虫『どろろ』に出てくる百鬼丸のエピソードを思い起こさせる。

もうひとりの主役である友魚が、父に名付けられた名、琵琶法師として名付けられた名と、自ら名乗る名と3つの名を持ち、幕府の方針に逆らい、自らの名を貫いて死んでいくあたりも、考えさせられる。

室町時代と現代の交差などの遙か昔のことのようで、自分たちと地続きの歴史であることを意識させる映像表現もよかった。

 

映像的な見所が多く、壇ノ浦とか、京都の様子とかも丁寧に描かれている。

犬王が人間の顔を取り戻すクライマックスも竜の映像などがとても綺麗だった。