知人からこの映画のあらすじを聞かされた時、(また、変なキワモノ映画かー)とスルーしかけたのだが、監督がケヴィン・スミスと知った途端に興味がわいた。
で、この映画をレンタルついでに先に感想を書いた『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』をレンタルしたのだが、その時点ではこの映画のスピンオフと知らず、観る順番も完全に前後した。
というのも、レンタルしたのはいいが、なんとなく気が重くて観る気がしなかったのだ。
知人にあらすじを聞いた時、頭に浮かんだのは『ムカデ人間』。
『ムカデ人間』に関しては設定だけで胸くそ悪くて話題にはなっていたがついに観ることはなかった。
ケヴィン・スミス的にはこの映画ブラックユーモアとして作ったのかもしれないが、自分はこういうので笑う感覚がない。どうしてもマジに捉えてしまって、ギャグとしては楽しめない。
(以下ネタバレ)
この映画でも冒頭、『キル・ビル』をまねて刀を振り回す少年が足を切り落とすシーンがあるのだが、それを観てゲラゲラ笑う主人公たちがまったく理解出来なかった。笑えるというよりとにかく痛ましい気分になる。
セイウチに改造された主人公とセイウチのコスプレをした老人の対決はちょっと滑稽だとは思うが、笑いにまでは至らず、救出されたにも関わらず人間に戻す手術も受けられず、セイウチとして飼われている主人公の末路はあまりにも後味が悪い。
70年代、こうしたマッドサイエンスに改造されるホラーというのは割とあって、結末は大体悲劇に終わるので、そういう懐かしのホラー映画という趣もあるのかもしれない。
ちなみにその年代の映画で個人的には『怪奇!吸血人間スネーク』は結構好きというか、嫌な気分にはなるが、そこまでエグくはないというか。
しかし、この映画に関しては、先に足を切り落とされたり、両腕を縫い付け、歯を全部抜かれて舌も切り取られるというプロセスが実に気分悪い。主人公の性格も決して良いとは言えないが、しかしここまでのことをされるほど悪い人間でもないので、セイウチに改造されるわ、相棒と恋人が浮気してるわで、踏んだり蹴ったり過ぎ。セイウチにされて涙をぼろぼろ流すシーンは胸が痛いよ。
また、主人公を改造する老人の過去に受けた性的虐待も聞いていて滅入る。
ケヴィン・スミスは何を考えてこんな映画を撮ったのか?
そして、こんなゲテモノ映画にも関わらず、出演する、かつての名子役ハーレイ・ジョエル・オスメントや、ジョニデ。
スピンオフにもハーレイ・ジョエル・オスメントが出演しているが、ケヴィン・スミスはそんなにハーレイ・ジョエル・オスメントが好きなのか? それともネタ扱いなのか?
ジョニデも家族ぐるみで仲良しとはいえ、よくこんな映画に出演したな。
そして、主人公演じるジャスティン・ロングって『ジーパーズ・クリーパーズ』の弟くんだったのね。なんでこんな役を引き受けた?(『コンビニ・ウォーズ バイトJK VS ミニナチ軍団』でもヨガの先生として登場している)
頭のおかしい老人を演じたマイケル・パークスはタランティーノ映画にもちょいちょい出ているようだが印象に残っていない。この映画においてはなかなか良い演技ではあった。
ケヴィン・スミスらしい会話や台詞のセンスとか、スリラーの見せ方など、まったく見所のない映画とは言えないが、やっぱりこういう方向性はちょっと勘弁願いたい。