なんとなーく気になる映画で、アマプラで観てみた。

北欧の雄大で神秘的な風景と、絵的には美しく、映像的には楽しめる。

映画は予想通りというか、とにかく淡々としていて、ともすると退屈になってくる類い。

童話的というか寓話的であり、宗教的なようでもあり、哲学的なようでもあり、こういうのを考察するのが好きな人にはたまらない内容。

どこか諸星大二郎の漫画を読んでる感覚に近い。


淡々としているだけに結末はある意味衝撃的。

賛否両論はあるようだが、まあ、それなりに心に引っかかりが残る映画という点では私的には悪くなかった。

 

ネタばれ

牧羊を営む夫婦のもとに生まれた羊。

羊を観た瞬間怪訝な顔になる夫婦。

だが、1章では羊の頭しか映らないので、何が夫婦を驚かせたのかはわからない。

 

多分羊の頭から下は人間なのかなーと想像したら、2章以降でその全貌がわかり、予想した通りだった。

 

夫婦は家畜にすぎない羊の頭を持つ羊人間を自分たちの失った子供にみたてる。

それは損失の穴埋め、代償行為で羊人間を利用してるだけかもしれなくて、それを認めたくないあまりに、妻は生みの親である母羊のなげきに耳をふさぎその存在を消してしまう。

そのくせ自分たちは本物の子供を得ようとするがごとく子作りをしている。

もしこの夫婦に新たな子供が出来たら、この羊人間はどうなるのだろうか。

結局は半分家畜であるこの羊人間は捨てられはしないだろうか。

 

まるで因果応報のごとく、このかりそめの幸せが唐突に終わる。

何故、羊人間の父親は母羊を殺した妻を殺さず、夫を殺したのか。

それは伴侶を殺された痛みを味わわせる為、あえて妻の伴侶を殺し、同じ痛みを与えたのだろうか。

 

悲劇的な結末にも関わらず、最後の女性のため息が、どこかこのいびつな状態から開放された、安堵のため息のようにも見える。

こうなったのは自業自得、仕方ないというあきらめにも似たため息。

だから悲劇であると同時に救いさえ感じるのかもしれない。

 

それにしても途中弟が登場するものの、基本夫婦ふたりだけの生活で、どこか息詰まりそうな、自分だったらちょっと堪え難い生活かも。