遠藤周作の原作『海と毒薬』は昔読んだのだが、記憶に殆ど残っていない。
1987年にモノクロで映画化されていたとを最近知ったので、観てみることに。
お話は第二次世界大戦の最中、1945年に起こった福岡県福岡市の九州帝国大学で行われた九州大学生体解剖事件が元になっている。
若い奥田瑛二が時々ウッチャンナンチャンの若かりし頃のウッチャンと被る。
渡辺謙も若い。まだ『独眼竜正宗』でブレイクする前の出演で、どことなくサイコパス的な役柄を演じていた。
成田三樹夫が出演していてラッキー♪
ネタばれ
最初の手術シーンからとてつもなく緊迫していて、息がつまった。ここだけでなんだかお腹いっぱいの気分。
『白い巨塔』を思い出すような医師たちの描写。学部内の権力闘争。戦争の狂気をあいまって、やがて非道な生体実験へと流れていく。
生体解剖に関しては映画の中では一体に留まっているが、ウィキペディアでざっと書かれた生体実験を読むだけでも、かなりえぐい。
淡々とした描写と、麻酔で眠らされているとはいえ、やはり生きた人間を実験体として使う生々しさがよく表現されていて、その手術を見学する周りの人間の見世物でも観るような視線といい、実に寒々しい。
これは下手なホラー映画よりよっぽど怖い。
同じ立場に立たされたら、誰でもこの状況に流されて行くのではないか、そんな人間の怖さが静かに伝わってくる。
最後の最後まで手術が継続して行く描写が続き、冷え冷えとした後味を残す。
途中の心臓マッサージのシーンは実際に犬の心臓を使用したとか。
『食人族』で実際のカメを解体するシーンが問題となって近年DVD発売が中止になったりもしたので、今のコンプライアンスで考えるとこの映画もDVDがその内に中止になったりしないのだろうかと心配。
映画自体はよく出来てるので、後世に残すべきだとは思う。