ずっと、観たいと思いながら見損ねていたこの作品、新宿シネマカリテのリバイバル上映でやっと観ることが出来ました。

いやー、思った通り傑作でしたね。

ロメロが自分の作品の中で最も気に入っていると公言するだけのことはあります。

 

 

ネタバレ

作品の中でもふれられているが、『エクソシスト』の公開後1976年に撮られた映画である。

過去にはエクソシズムの対象となった悪魔憑きも、現代なら精神疾患と呼ばれるところ。

同じように、過去ならば吸血鬼、ノスフェラトゥと言われた存在も、今なら嗜血症、シリアルキラー、ようするにやはりなんらかの精神疾患に類するものと思われる。

主人公マーティンも自分は病気だと自覚しているし、彼の一族では時々そうした精神疾患を持った人間が生まれてもいたのだろう。だが迷信深く信仰心の強い一族の間では、吸血鬼とされ、悪霊の所行と思われている。

マーティンの保護者となるクーダも敬虔なキリスト教徒故に、マーティンを怪物としか見ていない。

マーティンは自称84歳と言っているが、本当に84歳でなんらかの遺伝子異常で不老状態にあるのか、マーティンの妄想なのかはわからない。

 

とにかく、こうした病気に対しての理解者も、治療法もわからず、マーティンはその衝動を抑えられずに殺人を繰り返し、孤独感を深めていく。ラジオの相談コーナーに電話する描写などはマーティンの孤独感をよく表現している。

 

彼をひたすら精神的に追い詰めてくるクーダに対して、ドラキュラさながらの仮装をして登場するマーティンなど、皮肉が利いている。

 

そんなマーティンもクーダの孫娘クリスティーナとの関わりや、配達先で親しくなった夫人と関係を持つことで、そうした嗜好性が抑えられていくのだが、そこへもってきてのあの結末の衝撃性。

ロメロあっぱれ!

 

マーティンの吸血行為のサスペンスもロメロの演出が光る。

特に浮気中の人妻を襲うシーンのサスペンスは良かった。

吸血の後必ず身ぎれいにするなどのこだわりも面白い。

 

全体的にセンシティブな雰囲気漂う映画で、社会と相容れないマイノリティの心にどことなく刺さる映画ではないだろうか。

 

マーティン役のジョン・アンプラスは役柄にぴったりしていた。

神父役としてロメロも出演。

トム・サヴィーニもクリスティーナの恋人として登場する。

トム・サヴィーニの特殊メイクもこの映画の衝撃性を高めていて、いい仕事をしている。