※2021年に書いたものですが、何故か投稿し忘れていたようで、多少加筆して改めて投稿します。

ネタバレありです。

 

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督版を観たら、やっぱりリンチ版を再見したくなってしまいました。

何度も言いますが公開当時は不評だったこの作品、改めて観ても悪くないんですよ。

いや、確かにダイジェストっぽい感じもあるんだけど、もともと今となっては古典的な貴種流離譚なんで、むしろこれくらいの尺の方が観られるとさえ思いますね。

1994年にテレビ放映用に再編集された189分バージョンもありますが、こちらはさらに評判が悪い。私も一応観たのですが、ところどころ安っぽい映像が加わっていて、まあ、劇場公開版で十分かなーと思った印象あります。

 

最初に登場する皇帝の娘、イルーラン姫。

物語に殆ど絡まないけれど、何故かこの物語の狂言回しの役割を担っています。

※その理由は『デューン 砂の惑星 PART2』の感想にあります。

イルーラン姫が最初から大まかな世界観を語ってくれるので、わかりやすい構成です。

彼女が「その惑星の名はアラキス、またの名をデューン」と言ってからオープニングの曲が入るあたりは格好いいです。

 

そして、皇帝と対面するスペースギルドという流れもいい。

スペースギルドの造形も不気味でインパクトあります。

中世を思わせる衣装なども好きです。

ベネ・ゲセリットの教母様もいかにもな感じでよい。

 

レベッカ・ファーガソンのジェシカも悪くはないが、やっぱりフランチェスカ・アニスの方が華がある。

ユルゲン・プロホノフのレト・アトレイデス公爵もやっぱり素敵。

 

そうそう、音響兵器モジュールのアイディアも印象深いなー。

シールドの表現は洗練されているとは言いがたいけど、でも、シールドが衝撃には強いがゆっくりした動きだと突破出来るという特徴があるのはわかりやすかった。

 

原作がどうなのかはわからないが、リンチはハルコネン男爵のシーンになると嬉々として演出しているように思える。

まあ、スティングもサイコパス感あってはまってるし、ラバンも頭悪そうで良い感じ。

何よりハルコネン男爵自体が一生治らないような吹き出物と、醜悪さを漂わせていて圧巻。

ハルコネン絡みのシーンはいろいろ衝撃的な場面が多く、宙に浮いたハルコネンが機械油のようなものにまみれるシーンや、ラバンが生き物の体液を絞って飲むシーンなどことごとく不快。ホント不快描写が上手よねー、リンチ。

一番衝撃的だったのは、ハルコネンに捕まった公爵家のメンタートが毎日解毒の為にネコの乳を飲まなきゃならないという設定が結構トラウマになったよ。

男爵家のメンタートを演じるブラッド・ドゥーリフはもう最高だね。なんだか妙なこだわりのある動きがいちいち印象に残る。

 

リンチ版でもヴィルヌーヴ版でもダンカンが印象深く登場するんだけど、なんだかあっさり死んじゃうのよねー。

原作では複製人間となって5000年に渡って死と再生を繰り返して宇宙の歴史に関わるというそれなりに重要なキャラクターっぽいのだけど…。

 

フレーメンに関してはまんま中東のイメージ。

ポールの妹アリアはまんま中東の女性っぽかったもんね。

このアリアがまたなんとなく狂気を秘めてて面白い。ナイフを握ってうっとりする様はもはやポール側が正義とは思えぬ雰囲気だもんね。

 

ポールの宿命の恋人チャニに関しては、ホントただポールと結ばれる為だけに登場したように見える。

それ以外の活躍が殆どわからん感じ。

原作ではこのあたりはもうちょっと何か描写があるのかしらねー。

 

ポールとスティングの決闘も、いまいちスティング演じるフェイド凶悪さが描写としてないので、そのあたりの因縁が伝わってこない。

 

ヴィルヌーヴ版と比べると特殊撮影はやはり古いし、背景と人物の合成に不自然なところも多いけど、やっぱり独特の悪趣味な雰囲気や描写が印象に残るという意味ではリンチ版嫌いじゃないというか、面白いと思います。

 

最後はそれなりのカタルシスはありますが、砂漠の惑星に雨が降ることで、おそらく香料が失われ、この利権争いの終焉を意味するのでしょうが、果たしてそれがハッピーエンドといえるのか? という後味を残します。

仮に今、この世界から中東の石油が失われたら、石油利権の争いはなくなるかもしれませんが、世界は確実に不便になりますからねー。

この物語の世界でも香料が失われれば、スペースギルドによる星間移動が出来なくなるのでいろんなものが滞るでしょう。それによりいろんな問題が噴出しそうです。

それにポールがやけに神がかってしまったことや、アリアの残虐性など、先々もどこか不穏さを感じます。

ただ、砂漠が緑化すればフレーメンの人々にとってはやっぱりハッピーエンドといえるのかもしれませんね。

※実際原作はこの先もそう単純にめでたしめでたしとはならないようですが。