1984年から1985年にかけて世間を騒がせた未解決事件、グリコ・森永事件を元に描いた塩田武士の同名サスペンス小説の映画化。
自分はグリコ・森永事件をきっかけにお菓子の包装が厳しくなったという印象しか残っていないが、この映画を観た後に事件を軽く振り返り、映画の言う通り犯人の目的が株にあったのではないかという説などがあることを知った。
物語はフィクションと実際の説などをうまく盛り込みながら、見応えあるドラマに仕上げている。同じく未解決事件を描いた『ゾディアック』のように結局犯人宙ぶらりのままではなく、ちゃんと犯人像を描いているところが面白い。
尚、実際の団体等に配慮されているのか、お菓子メーカー名や、犯人のニックネームなどは架空のものになっているが、キツネ目の犯人の似顔絵だけはまんまな感じ。
道頓堀にグリコの看板がない光景はなかなかパラレル感ある。
この映画で印象深いのはやっぱり第44回日本アカデミー賞で優秀助演男優賞をとった宇野祥平。
星野源も悪くなかった。小栗旬は…。優秀主演男優賞とるほどの…以下自粛。
まあ、これは個人的好みもある。ちなみに小栗旬と松重豊が共演していると『ミュージアム』を思い出す。
とにかく宇野祥平は何を演じても自然な演技でリアリティがあるのだ。今回分厚いめがねをかけていたので、伊武雅刀とちょっと被ったけど。
いろいろ複雑な話ではあるのだが、ちゃんとわかるように描いているところはすごいと思う。
ネタばれ
私が一番涙腺に来たのが、声を利用され失踪した友人と再会する予定が約束の場所に現れず、その後もずっと友人の安否を案じ、ひとりその思いを抱えて生きてきた女性が、同じく声を利用されながらも無事家庭を持って生きている星野源の存在を知ったことで、友人の無事に希望を感じる場面が何故かものすごくこの女性の気持ちに共感してしまった。
口外出来ないような事件に関わった友人が自分にいて、その友人と不意に連絡がつかなくなったら、それはずっと気がかりとなって胸の奥につかえるだろうと、やけにリアルに感じてしまったのだ。
宇野祥平が母親と再会する場面も涙腺にくるものがあるが、やっぱり一番ぐっときたのはこの女性の場面だったりする。
残念ながらこの友人は悲しい結末となってしまい、この女性がその事実を知る事があるのかはわからないが、知らずに、どこかで友人は元気に生きていると希望を持っていられる方が幸せかもしれない。
それにしても、実際の事件で、声を使用された子供たちは今どうしているのだろう。元気に、幸せに生きてるのだろうか。
こんなドラマのような悲しい人生になっていなければいいと思う。