先にフリードキン監督版の方を観ていたのですが、やっとオリジナル版を観ることが出来ました。

よく父がこの映画を話題にしていたので、長年気になっていた映画でもあるのですが、ここにきてやっと観られた感じです。

 

 

ネタばれ

 

で、フリードキン監督版同様、ニトロを運ぶまでが長い!

退屈な上に長いので眠くなってくる。

でもここを頑張って乗り越えれば、さすがに第6回カンヌ国際映画祭グランプリ第3回ベルリン国際映画祭金熊賞をとっただけの面白さはある。

フリードキン監督版と違って、ニトロを運ぶ4人はそこまで複雑な背景はない。

イヴ・モンタン演じる主人公、フランスから南米に移民してきたマリオと、同じくフランスから移民してきたジョー。

あとは長年建設現場で吸ったセメントの粉で肺を病み余命幾ばくもない男ルイジと、かつて強制収容所にいたことがあるユダヤ系移民の男ビンバの4人。

 

このマリオがいまいち好きになれない男と言うか、同郷の仲間が現れるや、これまで世話になった同居人や恋人リンダに冷淡なまでの態度をとる。このリンダがボンキュッボンのナイスバディな可愛いお嬢さんで、マリオに冷たくされても彼に惚れ込んじゃっている。私からするとマリオみたいな男と結ばれてもろくなことはないと思うのだけど、他にいい男いなかったんかねー。まあ、酒場に集まっている移民は皆仕事にあぶれたボンビーばかりだし、その中ではマリオはイケメンな分ましだったってことかなー。

個人的にはマリオの胸開きすぎのランニングシャツがすごく嫌だったけど。

ジョーはジョーで、自分が仕事をとるために、ニトロ運搬の採用が決まっていた人物を葬ったっぽいし、そうまでして手に入れた仕事なのに、全然役立たずの足手まといっぷりを発揮する。

あれほどジョーを慕っていたマリオが、途中から呆れかえって、見下すようになるのだが、それでも最終的には「あんたが必要だ」とジョーを引き留めるあたりは意外に優しい。

 

フリードキン監督版はやはり吊り橋が最大の見せ場であるが、オリジナルは悪路や、車の方向転換をする台が腐っていて崩壊寸前というところをスリリングに見せる。サスペンス演出はオリジナルもさすがにはらはらさせてくれる。

また、落石によって路が塞がれ、岩をニトロで吹き飛ばす仕掛けを作るあたりの展開も、倒れ木をニトロで吹っ飛ばすフリードキン監督版のシーンにあたる感じ。

そこから、片方のチームが脱落するあたりも一緒である。

このあたりは演出の違いもあるのだけど、割とオリジナル版の演出が自分は好き。

死ぬ前に身ぎれいにする父親の伝統があるビンバはまるで死亡フラグをたてるようにトラックの中でひげそりをはじめる。ビンバは落石を破壊する際に一番活躍するし、ちょっといい男だったのだが…。

そして、後から来たマリオチームが、風圧を感じて前方を見ると爆発したもう一方のチームの煙が見える。

何故そうなったのかはフリードキン監督版のように描かれることはないが、危機を脱した直後に片方のチームが爆発している光景は、展開がわかっていても衝撃を覚える演出だ。

その後フリードキン監督版のようにマリオが盗賊に会うことはないが、吹き出る原油の湖と化した窪地を抜け出すあたりも見所のひとつで、この時、マリオはジョーを犠牲にして湖を渡りきる。

結果的にこの時の怪我が原因なのか、ジョーは目的地に着く直前で死亡する。トラックの中で語られるふたりの望郷の念が切ない。

 

最後のひとりが無事油田の火災現場にニトロを届けるというのもフリードキン監督版と同じで、ふたり分の報酬を受けたマリオは浮かれながらトラックを運転して、帰路につく。

マリオが帰ってくると知らせを聞いて歓びのあまり酒場の客と踊り出すリンダ。やたらハッピーエンドもりもりの雰囲気に不吉な予感しかしない。

案の定、マリオのトラックは蛇行して崖から落ちてしまう。

フリードキン監督版もアンハッピーな終わり方だったが、オリジナルも結局誰も救われないお話だった。

 

きっとこのお話の教訓は最後の最後まで気を抜くなってことなんだろうなー。

いや、多分そういうことではないだろう…。