『下妻物語』以降、なんだかんだ、中島哲也監督作品は殆ど観ているのだが、こちらは公開当時、役所広司主演だし、と気になりつつも、あまりに評価が低くて見逃していた1本。
いや、『来る』も世間の評価はいまいちだが、私的にはめっちゃツボにきた作品なので、この作品も案外自分のツボに来るかもしれないと、ここにきて観てみることに。
いやー、相変わらず中島哲也監督らしい作品というか、スタイリッシュで、ポップで、PVっぽくて、ビジュアル自体は楽しめるのだが、『告白』よりさらにダークというか、ビターというか、主人公をはじめ、登場人物糞ばかりというなかなかしんどい映画でした。
オープニングなんてタランティーノっぽいというか、ローマ字表記もあって外国映画みたいな赴きありましたね。
バイオレンスが容赦ないという意味では、やっぱりタランティーノを意識してたりするのかな。
時間軸があっちこっち飛ぶので、最初はちょっと入り込みづらいかなー。細かくビジュアルを繋ぐ編集もちょっと疲れる。
まあ、正直好きな作品とは言いがたいけど、インパクトはありました。いやーな気分を味わいたい時に見るには最適かもわかりません。いずれにせよ、この作品に嫌悪感を抱いて低評価にする気持ちもわかるかなーという感じです。
でもこういう気分の悪くなる作品を好む人はいるので、意外に低評価過ぎるかなーという気もします。
ちなみに、原作深町秋生の小説『果てしなき渇き』は未読です。
ネタばれ
とにかく役所さんが演じる主人公がまったく応援する気になれない糞っぷりでして。
妻をレイプしたり、オダギリジョーの妻をレイプしたりと、女性にとってはかなり女の敵です。
しかも、密かに自分の娘とも近親相姦願望を持っているようで、だから必死に娘を探す様が応援したいと言うより、ただただ気持ち悪い。
映画では娘が父親を誘惑しているように描かれているし、実際娘をレイプする描写もないが、首を絞めるという行為はある意味それを象徴しているようにみえる。
原作では酔った勢いで実際に娘をレイプしているようで、娘がバケモノと化した要因でもあるようだが、映画ではそのあたりは多少オブラートに包まれた表現となっている。
いずれにせよ、女性に対する扱いが酷すぎる主人公への嫌悪感が辛い。
役所さんは好きな俳優なだけに役の上とはいえ、女性をレイプする姿は見たくないですね。
娘も神経に障るバケモノっぷり。一応好きだった男性がレイプや麻薬で自殺した事への復讐という悲しい動機があるものの、その為にまわりを犠牲にし過ぎ。
彼女に密かに憧れていたいじめられっこの末路など救いがなさ過ぎる。
父親はCMで流れるような理想的家族を夢見ているが、彼をとりまく現実はそんなCMの世界とはかけ離れている。実際壁一枚隔てて、殺人や麻薬や犯罪に落ちていく人間たちの世界がある。そんな深い闇に所属した側の人間の世界は、平凡な幸福に身を置く人間にとっては、『不思議な国のアリス』のような異世界だ。
父親も娘も、あるいは彼らを取り巻く悪徳も、麻薬のような快楽に溺れ、快楽が切れるとひたすら渇きを癒やす水を欲するように欲望の触手を伸ばし続ける。それはすなわち愛の渇望でもあるかのように誰も幸せになれない負の連鎖。
だから、自分の分身たる娘をぶっ殺す為にひたすら父親は娘の遺体を探し続けるのだろうか。彼がぶっ殺したいのは本当は自分自身なのかもしれない。
妻夫木聡が『来る』以上に胡散臭い男としてはまりすぎる。最後に車でぶっとばされる所はある意味スカッとする。
オダギリジョーは最後にラスボスっぽく登場してあっさり退場。
雪の中、中谷美紀と共に娘を探す描写はなんとなくコーエン兄弟の『ファーゴ』を思い出しました。