ビートルズが存在していない世界に、ただひとりビートルズの曲を再現する事が出来る存在となったら?
というワンアイディアだけで作った映画という感じ。
アイディアは面白いがそれ以外はあまりにありきたりなストーリーと言うんですかねー。
監督がダニー・ボイルなんですが、なんでこんなありきたりなストーリーを撮ったんだろう、って感じではあります。
さすがに映像はスタイリッシュで、綺麗なカットもあって、ダニー・ボイルだなーという感じはあるんですが、いつもよりかなりおとなしい作品ですよね。
たまにはこんな可も無く不可も無いヒューマンドラマを撮りたい境地になったのかな。
とにかく一連の『ボヘミアンラプソディ』や『ロケットマン』同様、楽曲でもう勝ちだよねーという映画で、その分楽曲頼り過ぎじゃないか?という気分になる映画でもあります。
何はともあれ、この映画を観たら、やっぱりビートルズの曲の良さを再認識するというか、とりあえずベストアルバムレンタルしよって気分にはなりましたね。
ネタばれ
ビートルズの曲は確かに良いのだけど、時代背景とか、アイドル性のあったあの4人組だからこその爆発的人気というのもあるので、単純にビートルズを知らない世界で曲だけであそこまで成功出来るのかなという気分もありますが、そもそものプロットは主人公はビートルズの楽曲をもってしてもわずかな成功しか得られないという話しだったようで、そのあたりはリアリティがあったんですね。まあ、映画的には大成功の方が面白いですけどね。
主人公は自分の作った曲では評価されず、結局他人のふんどしで相撲をとってる感が拭えない訳で、そんな成功より身の丈にあった平凡な幸せこそが素晴らしいと気づく物語なんですが、多分一般的にはこういうベタなハッピーエンドが受け入れやすいと思うものの、案外人は成功を手にしたら『木綿のハンカチーフ』のように、かつての恋人を忘れていくもんだったりするよねーなんて思ってしまいました。あくまでこれはロマンティックな恋愛映画だなーと言うか。
とりあえずこういう展開って何百回と観たって気分にはなりますよね。別に曲がビートルズじゃなくても、主人公が成功して、でもやっぱり幸せは身近にあったと気づく『青い鳥』的展開になれば、なんでもいいんじゃないかっていう。それこそ『ハリーポッター』のない世界で『ハリーポッター』をぱくるとか、なんでも成り立つ話しです。
パラレルワールドで、コーラやハリーポッター、オアシスなど、どういうルール、法則かわからないものが消えることに何か意味があるのかと思えば、特に意味はなさそうですね。
さらに、主人公のみならず数名は変わる以前の記憶を有しているようで、このあたりもどういうことなのかは謎のままです。
通常だったら誰も記憶していない存在があったとしたら、その存在は自分の幻想と思うところですが、この主人公はあくまでビートルズは存在していたけど、なぜかいなかったことにされている世界と言う認識で、割とあっさりビートルズが存在していない世界を受け入れるんですよね。
幸い他に同じ記憶を有している仲間がいたから、やはりビートルズが存在していた世界はあったんだと確認出来ましたけど、その間、1mmも自分の記憶がおかしいと疑うことがないのはすごいですね。
そういえば、ビートルズは存在しないので、ジョン・レノンも殺されることはないんですが、でも、殺されずに長生き出来てよかったと言うのも何か違うような。そんな風にジョンのビートルズとしての人生をなかったことにするようなよかった感はちょっとひっかかるなーという気もしますねー。彼に生きていて欲しいというファン心理はわからなくもないのですが。
とりあえずジョン・レノンが主人公をハグをしながら「心療内科に行った方がいいよ」とアドバイスするのは吹きました。
そうそう、ビートルズの曲の前に完全に敗北宣言をするエド・シーランはよくこの役を引き受けたなーっと。実際の彼もそれくらいビートルズをリスペクトしてるってことかしら。
テレビで曲を聴いて、その人物の住所を調べて押しかけるって、エド・シーランじゃなかったらかなりやばいヤツって気がします。
主人公が両親の前でLet It Beを弾こうとして邪魔が入るシーンは、本気でイライラしちゃいました。
なんか、ビートルズの曲を演奏しようとすると必ず邪魔が入るという法則でもあって、結局主人公はビートルズの曲を誰にも披露出来ないという物語かと思っちゃいましたよ。