小松左京原作を森谷司郎監督により映画化。

森谷司郎と言うと、『八甲田山』がかなり力作でしたが、こちらに関しては大作は大作なんですが、そこまで面白い印象はありません。

主人公が藤岡弘ってあたりが濃いですね。いやー、久しぶりに若い藤岡弘見ましたけど、若い頃から濃いなーとしみじみ思いました。もう濃すぎて胸焼けしてゲップの出る勢いです。今の若い世代の俳優にはこんな男らしい男ってなかなかいないですよね。

映画の中で藤岡弘がカミカゼとして雑誌にとりあげられ「なんで彼がカミカゼなんだ?」と問われるあたりはもしかしてギャグかなーと思ってしまいました。またその雑誌の写真がことごとくあつくるしい。

ヒロインはいしだあゆみ。どっかメンヘラチックなんですよねー彼女。健康的な女性ってイメージはありません。

総理は丹波哲郎。日本は新興宗教国家に!と言うは冗談ですが、丹波哲郎は悪くなかったです。

田所博士を演じるのが小林桂樹。最初はずっと宍戸錠だと思ってました。

とりあえず、藤岡弘いしだあゆみのよくわからないふらふらした恋愛関係を軸に、日本沈没が当時認知されつつあったプレート・テクトニクスによる説明や、それに伴う政府の動きなど割と丁寧に描かれている印象です(プレート・テクトニクスに関しては私が小学校高学年くらいにNHKの番組で知ったように思います。でもこの学説はもっと早い段階からあったんですね)。

丁寧な分地味というか、いわゆるディザスタームービー的なものを期待すると物足りない感じですね。エンタメ性はかなり弱いです。悪く言えば退屈って言うんですかね。『八甲田山』はその地味な演出が実録っぽくて良かったんですけどね。

日本沈没に伴う災害の特撮も頑張っておりますが、いかんせん1973年の作品なのでまあ、推して知るべしと言うか、ところどころ噴火や溶岩の描写などは本物の映像を差し挟んでおりますが、いかにも本物の映像を差し挟んでるなーと言う印象でとってつけた感は否めません。

 

もともと小松左京は国を失った日本人がどうなるかと言う部分をメインに描きたかったようなんですが、その構想は第二部へと持ち越され、第一部はあくまで日本列島が消失することがメインとされたようです。

個人的には各国に散らばった日本人がどうなったかは気になるところですね。

 

 

ネタばれ

見所はやっぱり東京が震災に見舞われるあたりでしょうかね。

特に衝撃的なのは江東区、墨田区、江戸川区がほぼ壊滅状態となり、「あそこはもともと避難が不可能な区域ですからねー」と言われてしまうあたり。葛飾区に住む知人は子供の頃から「大地震が起きたら、火災でほぼ壊滅する」と教わっていたそうで、東京都には最初から見捨てられている区があるという話しもあるし、このあたりには住みたくないと思います。

 

あと、D2計画の発音が人によって「Dトゥ」だったり「Dツー」だったりするあたりが、発音の良い人とベタな日本人的発音という感じで気になりました。ちなみに藤岡弘「Dツー」派です。さすがTHE日本人。

 

物理学者の田所がやたら力んだ人物でちょっと好感持てなかったですね。

でも、日本と運命を共にすると決めた彼の最後の台詞が印象的です。

「日本人は民族としては若い。四つの島でぬくぬくとそだてられてきたまだ子供だ。外へ出て行って喧嘩をしてひどい目にあっても、四つの島へ逃げ込み、母親のふところへ鼻を突っ込みさえすれば良かった。しかしこれからその帰るべき国がなく、海千山千の世界の人間の中で…」

そっかー、日本人はまだ子供だったのか。まあ、鎖国時代長かったからねー。おまけにちっさな島国を出て荒くれた歴史をもつ大陸の人間と渡り合うのは一苦労しそうな気は致します(実際海外に移住してなじんでる人もいるので大丈夫と言う気もしますけどね。自分だったら老後が安心な北欧か魂の故郷ドイツに住みたいですね)。

でも、ホント、国を失うということはかなりアイデンティティを失う部分は大きいかなーと思いますよ。若い頃はともかく年をとると特にね。私事ですが、最近やっぱり幼い時に育った場所とか、育った地が急に恋しく思える時があるんですよ。他国に住んで老いたとき、どこか故郷を恋しく思う日がくるような、その時国そのものが失われたらかなり損失感を覚えるだろうなーと思うと、なんだかんだもし本当に日本沈没なんてことになったら辛いだろうなーと考えてしまいました。

他国においてはユダヤ人のようにつねによそ者感を味わうこともありそうですしね。

まあ、映画からは国を失う悲哀があまり感じられなかったですけどね。多分庶民視点があまり描かれていないからかなーと思います。

藤岡弘いしだあゆみもいつのまにどうやってその列車に行き着いたのか謎ですが、いつかめぐりあえる的な雰囲気で終わっております。ただ、個人的にはこのカップルの行く末が割とどうでもいい感じがしちゃうのは、いまいち共感を覚えなかったからなんでしょうね。

 

そうそう首相の別邸がキャンベラにあったりするんですね。

何故かアメリカなどの大国ではなく、キャンベラで日本人を500万人受け入れてもらう交渉をする描写が描かれていましたが、なぜキャンベラなんでしょうね。勿論各国とも交渉していると台詞ではあるんですが、長く描写として描かれるのはキャンベラだけなんですよ。

なんで特にキャンベラをフィーチャーしたのか? キャンベラに何かあるんですかね?