ロメロ新オブ・ザ・デッド三部作の二作目。『ランド・オブ・ザ・デッド』の流れで再見。プライム会員なら無料で観られるし。
二作目も『ランド・オブ・ザ・デッド』の路線でシリーズが続くのかと思いきや、一転、話しはゾンビ発生初期に戻り、しかもPOVで撮ると言う。この情報に小躍りしましたね。まさに原点回帰! 先の『ランド・オブ・ザ・デッド』の感想で何度も言った日常の延長線上にある非日常が醸し出す恐怖! しかもドキュメント畑出身のロメロがPOVで撮影したら、間違いなくリアリティある作品に仕上がるに違いないと! ええ、公開当時わくわくして映画館に足を運んだものでした。

 

だが、しかし、いまそかり(語呂がいいので使っているだけで意味なし)、はじまって数分の内にそれは落胆へと変わったのでした。

なんと、ロメロ御大! せっかくのPOV手法を、複数のカメラで撮影し、編集、効果、音楽、解説まで付けた素人ビデオ映画の体で作ってしまったのです。

ああ、違うのよ。御大! POVの醍醐味はその場の臨場感が醸し出すリアリティであって、編集したり、効果付けたり、音楽つけたり、解説いれちゃったら台無しなのよ! そこんところ全然わかってない!

 

しかも、人は年を重ねるとどうしても説教臭くなっていけねーやってところで、御大も『ナイト・オブ・ザ・デッド』や『ゾンビ(ドーン・オブ・ザ・デッド)』あたりはまだ多くを語らずに考えさせる作品を作っていたのに、この2作品が社会批評としての評価が高まるにつれ、ゾンビ=社会批評であるべきという方向が強まり、『死霊のえじき(デイ・オブ・ザ・デッド)』あたりからその傾向が強まった挙げ句、新三部作はくどいまでの説教臭さが高まってしまったのです。

多分ナイトやゾンビの時はロメロ氏は狙ってそういう作品にしたのではない気がするんですが、その後は狙ってる感満載で、狙えば狙うほど作品の質が落ちるという皮肉さね。

 

新三部作の三作目、西部劇ゾンビ版として作られた『サバイバル・オブ・ザ・デッド』に至っては説教臭い上に、映画としても面白くないものだから、映画館で1度観たっきり(ランドダイアリーは今回観たのをあわせて各3回観ているし、旧三部作はもっと何度も観ています。特に『ゾンビ』は数え切れないほど)、ロメロゾンビ映画の終焉を感じる作品でしたね。

ただ、サバイバルも登場人物が島に渡るまではそこまで悪くなかったんですよ。島に渡ってからがねー、もう、おっと、今回はダイアリーの方の話しでしたね。ではここからはネタばれで語りたいと思います。

 

 

ネタばれ

OPはそれでもまだ良い感じでした。殺人事件現場を取材していた取材班のカメラが目撃する死者の蘇りあたりの演出は悪くありません。そう、つかみは悪くなったんですよ。

病院のシーンもまずまずの出来だし、前半部分はまあまあと言える出来です。

しかし、後半、登場人物たちが金持ちの仲間の家に訪れてからはがっくりとつまらなくなります。

ラストはこれまた説教臭い台詞で閉じられます。トム・サビーニ『ナイト・オブ・ザ・デッド』をリメイクした際に主人公の女性に言わせた台詞「ゾンビより怖いのは人間だわ」と同じことをここでも言っている。ようするにゾンビより怖い人間は救う価値があるのか?と。

トム・サビーニの時も思ったけど、「それ言葉に出して言っちゃったら台無しなのよ!」って奴ね。ロメロ『ナイト・オブ・ザ・デッド』はそんなことを台詞であえて言わなくても、そう感じさせる作品だったし、だから名作なのよ。

こういう説教臭さは好きではないけど、でも、ラストにきていきなりインパクトだけはあったかなーと思います。

ただ、唐突というかそれまでの物語が「ゾンビより怖い人間」というテーマに沿って描いているようにも見えないので、最後に来て急にどうした?って感じはありますね。

 

ダイアリーはとにかく、もっともらしいことを主人公の女性がひたすら言わせ続ける映画なのね。その解説がひたすらうざい。この主人公には最初から最後まで好感を感じなかったです。

旧三部作ではどの作品も登場人物が魅力的だったのに、ランド以上にぱっとしない映画学科の学生たちってメンツで、ひとり年配の教授が終始自分に酔いしれているみたいな人物でこれまた好感を覚えないのですよ。

前半のミイラに追いかけられる女性(今時ミイラ男とかやけに古い感性の映画)のパロディが後半に繰り返されるのも、ここにきて急にコミカルな演出過ぎてしらけるし(『ゾンビ』でも暴走族集団とゾンビのコミカルな描写があるけど、あれは後に暴走族集団がそのゾンビにやられる凄惨さを際立たせる意味で効果的だったのに、今回は変に浮いてるんですよね)、なんだか、いちいち、「そうじゃない」「そうじゃないのよ」「ああ、なんでそーなるかなー」と思ってしまう残念さです。

 

ネット社会を取り入れたあたりは面白いと思うし、誰もが発信者となり、情報が氾濫し、真実がわからなくなる部分などは、今のコロナ禍の状況と重なる部分もあるんですが、テーマが先立ち過ぎて肝心の物語展開がいまいちな印象ですね。

せっかくのロメロのPOVだったのにと、非常に惜しい気持ちになる作品でした。