病原体を扱った映画の古典とも言えるマイケル・クライトン原作『アンドロメダ病原体』をロバート・ワイズ監督が映画化。
『ウエストサイドストーリー』や『サウンドオブミュージック』などミュージカル映画の監督のイメージが強いけどなかなか硬派なSF映画をしっかり撮っていて、クライマックスのサスペンスも魅せる。
小松左京の小説『復活の日』を映画化しようと20世紀フォックスに売り込んだ4年後、フォックスに出入りしていたマイケル・クラントンがこの作品を書いたという話で、クラントンが小松左京の小説を目にしたのか、そこからインスパイアされたのかどうかはわからないが、人類を滅ぼす未知の病原体を扱っているという以外はストーリー展開からみてもほとんど共通点はない。
時々、テレビでこの映画が放映されていたのだが、なんとなく全体に地味な印象で今日までちゃんと観ることがなかった。このコロナ禍のご時世だからこそ、観てみたくなったと言うのはある。
映画はほぼ原作に忠実と言う。実は子供の頃、友人がその原作を読んでいて、私に全部のストーリーを説明してくれたので、なんとなくイメージしていた通りのお話という感じはする。
やっぱり地味な映画だし、子供の頃だったらあまり面白いとは思わなかったかもしれないが、今観るとなかなか面白かった。結構長い時間科学者がひたすら病原体の解明に勤しむだけのお話なので、物語にほとんど起伏がないと言う意味では映画的な娯楽性が少ない作品ではあるが、その丁寧さは小説的な面白さではある。
キャストもまた地味というか、ほとんど知らない俳優さん。なんで個々人のキャラづけが最初はよくわからなかった。
あと、紅一点の女科学者が決してきれいどころじゃないのも地味な要因だが、こういうリアルな女性科学者像は悪くない。
ネタばれ
最初に研究所が汚染された場合核爆発をする仕組みになっていて、それを阻止するキーをひとりが持たされるところから、クライマックスの展開は予想出来る。
で、予想を裏切らないハラハラした展開で、なかなかよく出来ていた。
このクライマックスがこの映画で唯一盛り上がる場面と言ってもいい。
8秒手前じゃなくて1秒手前で止めてもよかったと思いますが、それはさすがにやり過ぎ?
クライマックス以外は本当に地味で淡々とした映画。
何しろ、物語の前半は五層になった研究所をひたすら滅菌しながら移動するシーンに費やされるのだから。その丁寧すぎる描写が若干くどいといえばくどい。
研究所から菌が流出してからはパンデミックは起こらず、人工雲で雨を降らせて海に落とすことによってアルカリと中和させ無害化し、めでたしめでたしと案外あっさりした結末。
ちなみに病原菌に感染し滅びた村で生き残った老人と赤ん坊というミステリーもポイントだったが、この両者の血液のph値が正常値でなかったという理由に拍子抜け。老人や赤ん坊であるところにキーポイントがあると思ったよ。結局胃潰瘍やアルカリ血症などの病気が要因だっただけで年齢関係なかったのね。
研究シーンを削って、パンデミックが起こって人類滅亡までの展開になれば、まんま『復活の日』になっていたかもしれない。でも、クライトンの興味はひたすら病原体を究明するアカデミックな部分にあったんだなーという感じ。