またまたこんな鬱映画に手を出してしまいました。再見です。
後味悪さ100%の作品ですが、キング原作の映画化ではベストには入る出来だと思います。
ちなみに私が考えるキング原作映画化ベスト
キャリー
シャイニング
デッドゾーン
スタンド・バイ・ミー
ミザリー
ショーシャンクの空に
黙秘
あたりですかねー。
原作は中編で、結末も違っていますが、映画として物語を膨らませ、まとめた功績はフランク・ダラボン監督にあると思います。
謎の霧に覆われ、そこに得たいのしれない危険な何かが潜んでいる。その為にスーパーマーケットで立て込まざるを得なくなった人間模様が実によく描かれています。
キングの作品でよく見られる狂信者の恐ろしさもたっぷり味わえます。
立て籠もり系ホラーとしてはロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』に匹敵するくらい良く出来た作品だと思いますね。
ネタばれ
人道的には正しかった主人公の行動も、事態を悪化させることに一役買ってしまうのが、やはり薬局に火傷の薬を取りに行くくだりでしょうね。私が火傷した人間の立場だったら下手に助けようとせず、安楽死させて欲しいと思うところです。霧の正体がわからず、いつ医療にかかれるかもわからない状態だったら尚更ですね。
そしてやはり思わず殺意を覚えずにはいられないマーシャ・ゲイ・ハーデンの演技は圧巻です。彼女が撃ち殺される時の溜飲の下がりようと言ったら、むしろそういう心情になることが怖いことなのかもしれません。
皮肉なことに彼女を撃ち殺したオリーが逃亡の際に真っ先に犠牲になると言うのも、そして、結果的に息子を殺し、ある意味息子を生け贄に捧げたかのような形になったことで事態が収束するあたりも、まるで結果的にミセス・カーモディが正しかったかのように思える結末です。決してそうは思いたくない映画ですけどね。
そしてこの結末に、もう少し待てば。と誰しも思う結末かもしれませんが、そのあともう少しが待てない時もあるんですよ。
無理矢理今の時勢に当てはめるなら、コロナにかかったと言うだけで自殺する人間もいるように、その恐怖事態に耐えきれないこともある。先の見えない恐怖や不安が人間に及ぼす影響を余すことなく描いたこの映画は嫌な映画だけど傑作だと思います。
ちなみに原作では主人公は霧の晴れない町をひたすら走り続けるという結末となっております。その先がどうなるかはご想像におまかせしますってことですね。キングは映画の結末に「その手があったか!」と言ったそうですが、私も個人的には原作より映画の結末の方がインパクトがあるなーと思います。