何故か角川映画続いております。

里見八犬伝と言うとどうしてもNHKの人形劇を思い出してしまうのですが、こちらは曲亭馬琴『南総里見八犬伝』がベースではなく鎌田敏夫『新・里見八犬伝』がベースとなっているようです。
里見八犬伝は八つの玉を持つ犬士を集めて戦うという設定が大変魅力的な作品で、SF版里見八犬伝『宇宙からのメッセージ』もそうですが、その設定だけで惹かれてしまいます。犬士が集まっていく過程もわくわくします。

この映画自体素晴らしく良い出来とは思わないのですが、その設定故につい観てしまう映画です。

薬師丸ひろ子真田広之の二大スターが主演し、脇には千葉真一志穂美悦子京本政樹夏木マリなど華やかなキャスト。そしてJACのアクションとなかなか見せます。

やや毒々しい演出というか、『魔界転生』のような衣装、美術など、かなりエンタメ性の高い出来です。まあ、どちらも深作欣二監督なのでテイストが似ているのは当然なのですが、実は『魔界転生』も毒々しい映画と思うものの、案外くせになるんですよねー。

今観ると画面の暗さなどが気になりますが、それなりに楽しめる映画です。

 

 

ネタばれ

実は『スターウォーズ』がベースにあり、真田広之がルーク、薬師丸ひろ子がレイア姫、なんてイメージもあるそうで、なるほど、確かに真田広之は敵側の息子だったと考えればそんな感じも致します。でもそれならば、最終的には薬師丸ひろ子と双子の兄妹だったという話しにもなりかねないのですが、それはありません。

真田が実は夏木の息子であるあたりや、八犬士のひとりが闇の軍団の侍大将だったりするあたりが結構好きです。

志穂美悦子萩原流行あたりの関係はなんだかエロティック。特に最後の戦いで、ばばーんとバックにクリムトの接吻みたいな構図の裸の女の絵が飾られているあたりはどん引きです。でも蛇に愛される女と蛇の化身、敵同士でなければ好相性だったのに残念でございました。

真田と薬師丸が愛し合うシーンが長くてちょっとこっぱずかしいというか、ずっと薬師丸のアップが続くのがなんとも照れます。(その後、薬師丸が本格的ベッドシーンを演じたと話題になったのが『Wの悲劇』でしたが、こっちもセミヌードが見えるくらいの演出だったような)

『ねらわれた学園』の時はもろに薬師丸アイドル映画という感じでしたが、この映画では同じくらい真田も取り上げられているという印象です。

ラストで死んだ八犬士が真田と薬師丸の後押しをするのに「行け! 行け! まほろばに向かって行け!」と言う台詞が何故か印象深いです。

それにしても、何の因果か八犬士に選ばれたばかりに、結局は真田と薬師丸が結ばれるための犠牲となったようにも見える八犬士たちがちっと納得いかん感じもいたします。戦力となりそうにない小さな男の子もいましたしねー。彼は最初からストッパーとなる為に選ばれたのかと思うとなんとも悲しいです。

 

ところで、八犬士の因縁とも言える100年前のお犬様八房の存在って結局なんだったんでしょうねー。八犬士の名前にすべて犬がつくようにそもそも犬に所縁がありそうなのに伏姫が八つの玉を放出して以降、肝心の犬は全く存在感を示さなくなりましたからねー。

 

 

追記

なんだかんだお家の因縁に囚われていた薬師丸と真田が、そのしがらみから開放されてふたりで生きる道を選ぶというのは非常に現代的な結末でしたね。真田はともかくお姫様育ちの薬師丸が身分を捨ててちゃんと暮らしていけるのかは気にかかりますが、ある意味これはハッピーエンドの『ロミオとジュリエット』とも言えるのかも。