新型コロナが猛威をふるう最中にこんな映画を観るとはなかなか自分を追い込んでいる気がします。

 

1980年に公開された角川映画。公開当時の宣伝ではジャニス・イアンの「ユー・アー・ラブ(Toujours gai mon cher)」ががんがん流れて、真っ赤な太陽をバックに立つ草刈正雄というインパクトあるビジュアルが印象的でした。

にも関わらず、実は私はこの映画は今日まで未見。なんだろう。当時の私は邦画、特に角川映画をなめてたところあったんですね。あと原作を読んだ友人からあらすじは聞かされていたので、それで満足しちゃったのもあると思います。

 

ちなみに小松左京の原作は1964年に書かれたもので、世界中に広がる致死率100%のウイルスで人類が滅びる様を描き、非常にスケールの大きい物語となっています。当時としては先駆的作品というか、ウイルスによるパニックを描いた作品としては『アンドロメダ病原体』も有名ですが、実は『復活の日』はこの作品よりも前に書かれた作品なんですよね。

 

映画も南極ロケ、アメリカ横断ロケ、本物の潜水艦チャーター、ほぼ英語によるシナリオと、製作費、製作期間と、かなり大作として作られ、ヒットもしましたが、残念ながら巨額に成りすぎて結局赤字に終わったようです。

映画を観ている時は南極シーンはきっとどっか北海道あたりでロケしてるんだろうとなめていたんでこのあたりの本気度には驚かされます。

 

監督は深作欣二ですが、この人は器用にどんな映画でも撮りますね。

 

実は当時姉が草刈正雄のファンだったんですが、私は彼は顔が整いすぎて、なんとなく好感を覚えませんでした。

しかし、改めて今回映画を観ると、若い頃の草刈正雄は本当にきれいな顔をしていたんだなーとしみじみ思いました。

 

それにしてもウイルスで世界が滅びるというシナリオは数あれど、それはあくまでフィクションの範囲で楽しむものでしたが、今のような状況だと洒落にならない怖さを感じます。

 

 

ネタばれ
オープニング、潜水艦から無人飛行艇で死に絶えた日本を視察するシーンから寒々とします。

 

ウイルス兵器として作られたMM-88が流出と言うあたりは、COVID(コビット)-19が実は人為的に作られたと生物兵器だと言う噂を思い出しますね。

インフル等を強毒化して、最初は普通の風邪のような症状から肺炎と重篤化する様もCOVID(コビット)-19を思わせます。

COVID(コビット)-19は当初は武漢風邪と呼ばれていましたが、MM-88もイタリアから広がってイタリア風邪と呼ばれています。今のCOVID(コビット)-19によるイタリアの悲惨な状況を考えると、これもまた重なって感じられます。

さらに人間のみならず、脊椎動物にも感染すると言うことで、そういえばCOVID(コビット)-19も犬、猫、虎等などに感染がみられるという報告もあります。

致死率感染率100%あたりは勿論COVID(コビット)-19とは違うし、より危険なウイルスではありますが、ワクチンも治療法もないあたり、ちょいちょい今の状況と重なる部分もありますね。

 

致死率45%になっても、医療従事者が防護服もつけず、マスクなしという描写はさすがにないわーと思いましたが、医療崩壊の悲惨さも今の現状を思わせます。

僅か3ヶ月で日本が全滅してしまうのですが、そのあたりの描写は割とあっさりしている印象。もう少し、このあたりの滅亡の過程を丁寧に描いても良かったように思います。

ただ、緒形拳が「どんなことだって終わりはある。どんな終わり方をするかだ」の台詞や、無線の扱いがわからない子供がピストル自殺するまでの実況や、家族すべてが死に絶えた家で生き残った子供を連れ出し、父親の元へ届けようとボートで海を渡る多岐川裕美の救いのない描写などは印象的です。

処理しきれない遺体の山を自衛隊が焼き払う描写も寒々とします。

映像が古いだけにこの辺りは昔のニュース映像を見ているような気分になります。

 

ホワイトハウスでは誰もが発病しながら医者にかかることなく大統領室に集合しているんですね。

 

後半は生き残った各国の南極隊員が協力して、人類をいかに存続させるかが課題になってきます。

友人から原作のあらすじを聞かされた時、女性隊員が少ないが故に性交渉が管理され、恋愛感情のない複数の男性の子供を産まなくてはならないという展開に、子供ながらにおぞましさを感じたものでした。映画の方はそのあたりは控えめな描写になっているような。

そうそう、布施明の前妻であるオリビア・ハッセーはやっぱりお美しかったです。

 

米ソ冷戦の時代とあって、地震により誘発される核弾頭をいかに止めるかが後半のクライマックスです。

南極から一歩外に出れば死のウイルスが待っているのに、自ら名乗り出るカーター少佐の男気が良かったです。

それだけに、使命を全う出来ずに死亡は悲しかったですね。

 

核弾頭が発射され、世界が二度死に、生き残った草刈正雄がただひたすらに仲間のいる南極を目指してアメリカ横断する様はやたらめったら壮大で、何故かマチュ・ピチュにまで立ち寄ってるんですよね。なんでわざわざマチュ・ピチュに登った?

映画ではよくわからなかったんですが、原作では中性子爆弾の影響で草刈正雄はちょっと頭がおかしくなっていたという設定らしいです。キリスト像や死体と脳内会話していたのはそういう訳だったようで。

 

とりあえず仲間と再会を果たした草刈正雄ですが、そんな状態で今後大丈夫なのか?という気が致します。

都合よくMM-88は中性子爆弾の影響で無毒化したようなので、ここから人類は復活していくという希望のある終わり方なのですが、何しろ「ユー・アー・ラブ(Toujours gai mon cher)」がなんとももの悲しい曲なので、すっきり良かった良かったとはならない映画です。

 

今観るにはちょっと鬱になる映画ですね。