久しぶりに観ました。ディテールは忘れてましたが、後味がすこぶる悪い映画だったことだけは記憶しております。

改めて見ると、これはまるで和製ダリオ・アルジェントの映画みたいですね。

事件の真相にせまるものは次々と殺されていく。その殺され方がスプラッタのように派手。そして物語を盛り上げるための過剰なまでのホラーじみた演出。

全体に昔の日本のおどろおどろしさを感じさせるあたりが横溝正史調というか、原作が第一回横溝正史ミステリ大賞を受賞した斎藤 澪の同名小説なので当然と言えば当然。私も長らくこれが横溝正史の作品と勘違いしてたくらいでして。

しかし、はっきり言ってこの物語は犯人謎解きはそれほどメインじゃないというか、かなり最初の段階から犯人の察しがつくし、早い段階でネタばらしも行われます。ただ、それはあくまで最後の後味悪いオチの布石に過ぎず、まあ、正直この映画は岸田今日子の怪演におそれおののく映画と言えましょう。

 

 

ネタばれ

最初の犠牲者の殺され方がやたらに残酷。警察が「これは怨恨だな」と言うほどひどいのだが、後に単に口封じだったことがわかる。なんで、あんなに派手に殺した? 首を切った時点で致命傷なのに、背中刺したり胸刺したり。で、なんでわざわざ胸を露出させたのかも謎。サービスカット?

このあたりは犯人が最初は男? と思わせて女なあたりがまさにアルジェントっぽい。

この犯人、ケーキの箱は持ち去ったが肝心のケーキは残したままだし、現場にばっちり手形を残し、着替えの服まで持って行くあたり、手がかり残しすぎでしょう状態。

案の定、ケーキ屋が特定され、犯人が女性ということがあっさり突き止められる。

 

この事件を追うフリーライターと後輩根津甚八が訪れるバーのママが岩下志麻。あ、犯人ね、とここで察しがつく。いや、でも、いくらなんでもそんな単純な話しではなかろうと思ったけど、そんな単純なお話でした。

というか、根津甚八の行きつけのバーのママが犯人って、世の中狭いねー。

このフリーライターが今回の事件を追っていることが早速犯人にダダモレ。

 

で、このフリーライターが肺がんの為か、ときどき全身に痛みが走り失神してしまう(肺がんってそんな症状あるの?って思わず調べちゃった)。そんな状態に遭遇したママなのに、救急車を呼ばずに家に送っていく謎。意識を失った彼を死んだのではないかと心配して付き添ってみたりするが、いやいや、そんな状態ならやっぱり普通救急車呼ばないか?

 

で、このフリーライターが会津に行き、あっさり犯人がわかる。わかった上でのこのフリーライターの男気はちょっと泣かせるね。

でも、心中しようとして失敗し、男を自殺したように演出するのはよくわからんわ。睡眠薬飲んで死亡しただけでも十分自殺に見えるのに、何故手首切った?

そして血のついた手でべたべたフリーライターのことを触ってるし、どうしてこう証拠を残したがるかねー。

 

フリーライターの後を引き継いで謎に迫る根津甚八。ここでもあっさり犯人がわかる。ここで岩下志麻のアダルティなセーラー服姿が一部で話題になっているとか。というか、犯人はまず先にこの育ての親を殺すべきじゃないか。先のフリーライターも、根津甚八も、彼女の存在であっさり真相に近づいてるやん。

 

岸田今日子ママに赤ん坊の頃から父親に復讐するように洗脳された娘は、父親の手形を手がかりにせっせと手相の勉強をし、青蛾という占い師を代役に、政治家の間で当たる占いという評判を聞きつけていずれ訪れるであろう父親を待つという、なかなか遠回りな計画をたてていた訳だが、何故青蛾は別の女性を代役にしたてのかな。本人が青蛾でもよかったように思うけど。美人なんだし。

そもそも、それほどの的中率ある占いが出来る時点ですごいね。何かからくりがあるのかと思ったら、その占いの腕前はホンモノだったようで、何故犯人にそれほどの占いの才能があるのかはわからん。

 

青蛾も犯人の計画を止めようとしてあっさり殺される。もう、見境なし。その青蛾の遺体とかはどうしたんかねー。

まあ、いろいろ雑な展開です。

 

なんやかんやでおびき招き寄せた父親によって知る驚愕の事実。というかおびき寄せた父親があっさり根津甚八を同伴させてるあたりもねー、いろいろ穴だらけの計画なんですよ。まあ、犯人は母親に洗脳されたちょっと頭のおかしい女性と考えると、これまでの穴だらけの殺人も納得か?

ここからはひたすら父親による真相タイムになるのだが、まあ、回想シーンの岸田今日子の怖いこと怖いこと。まず、赤ん坊がネズミに顔をかじられて死亡という、戦後の間もない時代だこそ起こる悲劇の怖さ。そして頭がおかしくなった今日子が「死ね」とつぶやきながら針供養する怖さ。そりゃー、父親も怖くて逃げ出すわね。

さらにこっそり元妻と会ってる彼に「知ってるのよ」と布団の中で笑う今日子。今日子ホラーのオンパレードやー。

あとは、父親と元妻の間に生まれた子供をひたすら洗脳し続け、彼女の七つの誕生日に両手首を切って自殺という、強烈なまでのトラウマを植え付ける。

ええ、今で言う毒親の究極版ですよ。

 

そりゃー、真実を知った岩下志麻の精神は崩壊します。三つ子の魂百までも、忠実に自分をさらった偽の母親の復讐を果たそうと、その為だけに生きてきたという、まったく救いのないお話で後味悪さ200%です。

彼女が母親の人形に過ぎなかったことを象徴するように並ぶ日本人形の薄気味悪さもあいまって、後味完全ホラーです。