やはりヒトラーを扱った映画にハズレなしだな(とも限らんけど)、そしてサム・ロックウェルが出演している映画にハズレなしだな(とも限らんけど)。そしてアルフィー・アレン出演は…ハズレもあるけど今回はアタリだね。

いずれにせよ『ジョジョ・ラビット』は優等生な映画だったわー。

あと、最近すっかりアクション女優と言うイメージだったスカーレット・ヨハンソンが素晴らしい演技を見せている。

スティーブン・マーチャントって俳優さん、あんまりよく知らないけど風貌にインパクトあったわ。

レベル・ウィルソン、「あれ?『ピッチ・パーフェクト』の人じゃ?」って思ったらやっぱりそうだった。『CATS』にも出演するのね。意外に活躍してるねー。

 

タイカ・ワイティティ監督、初見は『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』で、傑作だけどインディーズっぽい作品だったのに、気がつけばあれよあれよとメジャー大作作品を手がける監督に。

今回も監督、脚本、そしてヒトラー役でも出演。マーベルみたいなど派手エンタメのみならず、こういうヒューマンドラマもきちんと撮れる監督なのね。

原作はクリスティン・ルーネンズの小説らしいが、原作には空想のヒトラーは登場しないらしい。

いずれにせよ実によく出来た物語。

 

 

ネタばれ

監督はニュージーランド出身だけど、ロシア系ユダヤ人なのね。ユダヤ人視点でみるとヒトラーは絶対悪。まあ、レイシストの象徴でもある訳だからユダヤ人のみならず、認めてはいけない存在となる訳だけど。

 

父親が不在で(生死不明)、根が優しくて臆病でいじめられっこの要素がある少年が、ヒトラーに父性を感じ、強い自分であろうとナチに憧れるあたり、わかりやすい。

のっけ、ビートルズの曲にあわせて国民がヒトラーに熱狂する様を描くあたりも、少年にとってはヒトラーはスーパースターでありアイドルのような存在なのだろう。ヒトラーがイマジナリーフレンドと言う発想が面白い。少年の心にあるヒトラーは実にユニークで陽気なおじさん。少年と共にかけっこする無邪気な姿が傑作。冒頭の手榴弾を投げるシークエンスが実に良い。

 

サム・ロックウェル演じる大尉は実に魅力的だった。51歳になってもセクシーなサム・ロックウェル。この人はホントいい俳優さんだなー。

サム・ロックウェルとアルフィー・アレンのコンビも腐女子にはたまらなそうな関係。私は腐女子趣味はないけど、それでもこのふたりは可愛かった。ふたりの水着姿もかわいかったし、この時点でアルフィーがちょっとおねえっぽい感じがしたんだけど、羊飼いの勘違いエピソードで、あ、このふたりってそうかーっと確信したね。くすりと笑わせながらさりげなく示唆するあたりは上手だね。

だから、サム・ロックウェルは大尉でありながら、ゲイをも迫害するナチに心情的には反発しつつ、うまくそれを隠して生きていた訳だ。

サム・ロックウェルは少年の母親が反ナチのレジスタントであることを知っていたようにも思える。だから家宅捜索の時に現れたり、さりげなくユダヤ人少女をかばったのだろう。

サムとアルフィーでオリジナルデザインの軍服で登場するシーンも実にいい。このふたり、ドラッククイーンの要素もあったのかしら。彼らの登場で戦場がまるで夢の中の出来事のように思える。

そして最後に少年を助ける優しさにもぐっとくる。この大尉のキャラ立ちは素晴らしかったね。

 

少年のちょっとおデブでメガネのお友達のキャラもよかったね。最後まで生き残ってくれて何より。

 

スカーレットの母親もすごくよかった。ユーモラスで優しくて美しくて、親子と言えども主義主張がことなることはあることで、それでも息子に愛を注ぐ様が実によかった。

彼女の死は突然でショッキングでもあるけど、少年が自分が憧れた世界の暗黒面を痛感する場面でもある。

 

スカーレットがかくまっていたユダヤ人の少女がたまたま美しく、たまたま亡くなった少年のお姉さんに似ていて、たまたま機知に富んでいたのも幸いだった。このあたりのちょっとした恋愛模様も微笑ましい。

根が優しい少年だから、少女の婚約者に嫉妬してちょっとしたいじわるをするものの、でもやっぱり優しい手紙を書き直すあたりも実にかわいい。

最後に、少女から離れたくないあまりに嘘をいい、その嘘がばれて叩かれた際も「当然だね」と受け入れるあたり、男前やん!って思ったねー。

大丈夫。この年頃の年の差は大きく感じるけど、10年、20年ったらなんてことのない年の差や。お互い孤児となっちゃってこの先どうなるかわからないけど、でも、彼女が望むダンスを、母親と踊ったダンスを、ラストに組み込むことで暖かいエンディングとなった。

 

ヒトラーが自殺したと聞いた直後に現れるヒトラーが頭から血を流しているのが面白かったね。

そして少年は虚像のヒトラーから卒業する。

 

何度も言うが、よく出来た物語だと思う。特にケチをつける部分もない。

ただ、あえてケチをつけるなら少しあざといまでに綺麗すぎるかなーって思う。