デ・パルマ作品の中でも私は『スカーフェイス』が結構苦手でして、この作品もアル・パチーノ、麻薬王というキーワード的に自分にはあかんやつかもなーなんて思ったのだが、結論を言っちゃうと好き系ではないけど、『スカーフェイス』よりは面白かった。
『スカーフェイス』は『ゴッドファーザー』で格好良かったアル・パチーノの役柄的にギャップがあってなじめなかったのと、主人公の偏執的とも思える妹への執着が気持ち悪かったのと、最初に主人公の仲間が殺される場面が嫌な死に方ベスト10に入るほどトラウマ的と言うのもあったのだけど、その点こちらの映画は面白いシーンが4箇所あって、お点が高い。
その面白かったシーンはネタばれで後述したい。
そうそうユダヤ人の弁護士、ショーン・ペンだったのね。気づかなかった!
あと、ヒロインを演じるペネロープ・アン・ミラーがすごく可愛い。
『レイジング・プラン』の翌年に作られた作品だが、『レイジング・プラン』がザ・デ・パルマという感じなら、こちらはデ・パルマ節は抑えめな印象。
ネタばれ
面白かったシーンその1
主人公が従兄弟の麻薬取引に付き添ってプールバーで襲われるシーン。最初に不穏さをかぎ取った主人公がビリヤードをしながら様子を伺い、銃撃戦になるまでの流れの緊張感が上手い。
面白かったシーンその2
ユダヤ人がイタリアンマフィアにエレベーターで襲われるまでのシークエンス。先のシーンに続きこういうスリリングな演出はデ・パルマお手の物。
面白かったシーンその3
ユダヤ人弁護士が入院中マフィアの殺し屋が来て、主人公が渡した拳銃を向けるが、拳銃に弾が入ってなかったとわかるくだり。なんだかちょっとすっとした。
面白かったシーンその4
あのマイケルがイタリアンマフィアに追い回される皮肉。今回のアル・パチーノはプエルトリコ人って設定だものね。ここでの電車から駅構内の追いかけっこは最大の見せ場。デ・パルマさすがの手腕。
(もともと『アンタッチャブル』で予算不足で出来なかったシーンを使用したという話しもある)
エスカレーターのシーンなど最高だ。
残念な点は、冒頭から主人公が逃げ切れないことがはっきり示唆されていて、クライマックスもそうした結末を見据えながら観るので、どこか「どうせ、最後で助からない」と冷めた気持ちになってしまうこと。
さらに、冒頭で今にも死にそうに見えた主人公が最後でやっぱり助からないというひねりのない結末。
もっと言えば主人公は自分の子供が残せることに勝手に満足しちゃってるけど、今後育てて行く女性の苦労を思うと「なんだかなー」と言う気持ちになる。
彼がこれまでやってきたことを考えるとハッピーエンドと行かないのもわかるのだけど…。
この映画観てたら、無性に『アンタッチャブル』を見直したくなった。