ネタばれで行きます。

 

子供の頃、黒部ダムの建設のコミックを読んで、とにかく凄まじく大変という印象だけが残っていて、その後も黒部ダムというと多くの人々の犠牲の上に出来上がったという重たい印象だけが残されていた。

 

でも、詳細は殆ど忘れているし、丁度知人が黒部ダムを訪れたので、それをきっかけにこの映画を見てみることに。

 

世界的にみても上位に入る難工事だったようで、171名の死者も出ている。

(もっともその内78名は建設現場ではなく宿舎での雪崩の被害によるものらしいが)

映画では黒部ダム建築現場への建築資材や人材を送り込む上での輸送手段があまりに奥地であるが故、工期を短縮する為に交通路となるトンネルを掘るという部分がメインとなっている。

このトンネル掘りで多くの死者が出たという印象だったが、映画を観る限りは発破による事故で2名死亡と、寺尾聰死亡くらいで思ったより死者は出ていなかった。

とはいえ、トンネル工事が大変困難であったことは映画からも伝わってくる。破砕帯にはばまれつねに冷水が吹き出る水浸しのトンネル内で、工事が難航する様は、現場の人間は勿論観ているほうもしんどい。

撮影においてはトンネルで出水するシーンは大量の水が出過ぎて負傷者が出るほど危険なものであったようで、迫力あるシーンとなっている。

 

ただ、正直、これ、ドラマの部分があまり面白くない。

最初は工事に反対していた大学出のインテリ石原裕次郎が、実の息子さえも工事の犠牲にすることを厭わない非人道的父親(辰巳柳太郎の狂気とも思えるような演技は印象的)との反発を経て、トンネル開通と共に死に際の父親の本音を知り(何故死亡したのかよくわからんけど)、彼自身も長いトンネルから抜けるというドラマと、裕次郎の父親とは対照的に現場で死者は絶対出さないと言うポリシーを持ち、人道的とも言える三船敏郎(裕次郎の実の父が亡くなりこの三船が義理の父になるというのも何か象徴的?)。人間に打開出来ない困難はないと信じ、癌さえも必ず乗り越えられると信じようとするが、トンネル開通の直後、白血病の娘が死亡するというドラマが平行する。

この娘の死が何を意味しているのか、よくわからん。

三船敏郎と柳永二郎がサウナで語り合うシーンは、いわゆる裸のつきあいってやつだろうか…。なんだか私には珍妙なシーンにみえた。

宇野重吉親子共演というのも話題ではあったのだろうが、とってつけたようなエピソードのようだ。

 

あくまでメインはトンネル工事なので、その後のダムや電力の工事などはさらりと描かれているものの、高所での作業はざわっとくるものがある。

トンネル工事のみならずこのダム工事もかなり大変だったのではないかなーと思うのだが、そのあたりはどうだったんだろう。