新春一発目は1976年ブライアン・デ・パルマ監督作品。
これでもか、これでもかとデ・パルマお得意の360度ぐるぐる映像炸裂。
のっけから、16年の歳月を表現するのにまわるまわるよ〜カメラはまわる〜。
失った女性にそっくりの女性と再会ってあたりですぐに『めまい』が頭に浮かぶ。
実際のところ『めまい』を見たデ・パルマがそこから着想を得たというのだから、当然と言えば当然。
ジュヌヴィエーヴ・ビジョルドって、『戦慄の絆』に出演していた女優さんか。年をとっても童顔で年齢不詳の女優さんなので、大人の女性と少女を演じ分けする上ではまり役。特に少女を演じる時は本当に幼い少女に感じられる。
やたらにソフトフォーカスされた映像にロマンス映画みたいな雰囲気なんだけど、16年という歳月に俳優の年齢を感じさせないよう、意図的に撮られたものらしい。
ネタばれ
最初に強面のジョン・リスゴーが登場した時点でストーリー知らないけど黒幕はこいつだ!って思ったね。実際その直感にはずれはなかった訳ですが。にしてもこんな若いジョン・リスゴーはじめてみた。どうやら新人として起用された模様。ある意味映画デビューだったのかな。
最初に、妻と娘が死ぬ瞬間は映さなかった点と、ふたりの死体が見つからなかった点で、何か仕掛けがあるというのはこの種のミステリーでお察し。
さらに、妻子のお墓を模した教会、妻との出会いの場所で妻そっくりの女性と出会うという出来すぎた展開にも、恋愛映画でもない限りは仕組まれた何かがあるというのは当然察するものの、主人公が長々と女性をストーカーしたり、そのロマンスにせっせと時間をかけるので、なかなかストーリーの全貌がわからなかった。
まあ、共同経営のジョン・リスゴーが何かを仕組む可能性は充分あった訳ですが。
しかし、まさか娘が生きていて、父親に復讐をもくろんでいたとは思わなかった。そのための16年という歳月だったのね。というか、娘が母親そっくりに成長するとは限らないし、父親がそこまでの年月妻を思い続ける保証もなく、もっといえば彼が妻と出会った教会を訪ねるとも限らないので、リスゴーの計画はいろいろ無理を感じるけど。
そしてほぼほぼ目的を果たしているのにも関わらず、わざわざ真実を話して殺される展開はまぬけ。正当防衛を装って主人公を殺そうともくろんでいたのか? にしてもリスキーな作戦。
近親相姦というなかなか際どいお話しだけど、そこはうまくぼかしている。でも、制作ドキュメンタリーを見る限りはデ・パルマがはっきりと父子でそういう関係となりそのために娘が精神崩壊を起こしていると明言しているので、なかなかヘビーはお話し。
最後は悲劇で終わるのかと思ったが、完全に子供に返ってあどけない顔で父親に抱きつく娘を前に、やっと事実を理解する父親という場面は実に感動的。いい後味でよかった。でもやはりどこかもの悲しさが残る。
そして、最後もいつもより多めに回っている気がするぐるぐる映像。
バーナード・ハーマンのどこか不穏で、感動的なスコアがこれでもか言わんばかりだ。