前半、シナリオも平凡だし、俳優の演技もいまいちだし、「なにこの低予算B級映画? なんでこれが世間で高評価なの? ところどころ見られる変なカメラワークとか勢いだけで評価されてない?」と思ったけど、後半納得。
なるほどこれは良くできているし面白い。
ただ、予備知識なさすぎで、こんなに画面酔いするカメラワークとは知らず、前半ギブアップして途中退席もやむを得ないと思うほど気分が悪くなったので、三半規管弱い人は要注意。
でも、途中退席しないでよかったというか、これ絶対最後まで観ないと勿体ないやつや。
滅多に邦画観ない私だけどこれはアタリというか、今の所下半期に入ってから劇場で観た映画の中では一番面白かった(まだ3本しか観てないけどねw)。
でもあくまでハードルをあげず、思わぬ拾い物をしたという感覚で観るのがよいでしょう。
ネタばれ
見終わって三谷幸喜の『ラヂオの時間』や『ザ・マジックアワー』を思い出すというか、ただ、私は三谷幸喜の作品はあざとすぎていまいち好きになれないので、こちらの方が好感度は高い。
最初の37分の短編映画の、実験的といえるカメラワークとか、俳優のいまいち演技とか、筋立ての凡庸さとか、なんだかちょっとヘンテコな場面などが、すべて伏線となって、その裏側を知ると途端に面白くなってくる。監督を引き受けた主人公の心情を知ると、彼が発する台詞の共感度もあがる。監督役としての「カメラを止めるな!」と現場の監督としての「カメラを止めるな!」の言葉の説得力の違いもよく表現されていた。
主人公の妻が女優として役にのめり込みやすいとか、護身術を趣味としているなどの設定も生きている。
娘も母親似ののめり込みで現場をいきなり仕切り出す様が面白いし、様々なトラブル、アドリブなどを乗り越えて行く様も面白かった。
酔っ払いの男優や、硬水に弱くて腹を壊す男優、アイドル気取りの女優、逆らってばかりの男優、いきなりゲロされて動揺しまくりメガネくんなどそれぞれのパーツもほどよく配置され、伏線もきれいに回収されている。
さらに、スタッフの突っ込みもよく、さらなる笑いを誘う。
最後はなんだかんだ爽やかな後味。最初はただのB級映画にしか見えなかった作品が背景を知ると微笑ましくなる。
まあ、まがいなりにもカメラマンが撮影しているという設定なので、最初からカメラワークが素人POV見たいなのはいただけないというか、もうちょっと見やすくしてくれると三半規管弱い人間にはありがたいのだけどね。