1940年代に実際に起こったロンリー・ハーツ・クラブ事件を題材にした映画。

2006年に同じ事件を題材にした『ロンリーハート』があるが、あちらはどちらかと言えばふたりを追う刑事エルマー・C・ロビンソンの視点に重きをおかれた感じで(それもそのはず、この映画で監督・ 脚本を務めたトッド・ロビンソンはエルマー・C・ロビンソン刑事の孫なのだ)、レイモンド役をジャレット・レト、マーサをサルマ・ハエックが演じるなど少々美化が過ぎる。

 

そういう意味ではこの作品は犯人ふたりを中心に実際の事件に比較的即しているし、容貌も実際のレイモンド・フェルナンデスとマーサ・ベックに近づけてはいるが、やはり事実そのままと言う訳ではない。また、彼らの背景などの多くが割愛されている。

 

私がこの事件で興味深いのが、それなりに女性を魅了する容姿をもつレイモンドが、内分泌腺の異常による肥満体の決して美女とは言い難い女性と何故愛し合うに至ったかという点である。が、この映画ではそのあたりはあまり深く描かず事実としてふたりは愛し合い、結婚詐欺と殺しの相棒となったという部分を淡々と描いている。自分としてはその点は物足りない気分である。

 

実際のところ、レイモンドは事故により頭を強打し、その後遺症により人格の崩壊と異常な性衝動を持つようになったらしい。
一方、マーサもまた内分泌腺の影響か、激しい性衝動に悩まされていたというので、ある意味ふたりの性欲が一致したのかもしれない。また愛情不足で育ったレイモンドにとってマーサの母性が居心地よかったのでは?と言う話もあるようだが、どうせなら映画でもそのあたりをもうちょっと描いて欲しかったような。

 

まあ、とにもかくにも、このふたりがやってることはとんでもないことなのだが、不思議な純愛が感じられ、最後は何やら感動さえ覚えてしまう非常に困ったカップルなのである。

 

 

ネタばれ

大体事件のあらましは事実に即しているのだが、最後にマーサが警察に通報する点は事実とは言えない。

ここは映画的によりマーサのジェラシー、その悲しい性を強調しているように思える。

 

この映画で殺される被害者たちはちょっとイライラさせる部分もあり、特に初老の女性が夜中に何度も目を覚まし小切手にこだわり出すあたりはこっちもかなりイライラして、なんとなく殺されてすっきりみたいな危ない感情におとしめられる。

あのイライラ演出はこの映画で一番良くできたシーンだ。